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初恋Returns 21
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俺は重々しい門の脇にある、近代的なインターホンを押した。名乗って数秒で門が開く。
「祥真坊ちゃんおかえりなさい」
「元気そうですね!」
きれいに掃き清められた石畳を進む途中、いかつい兄ちゃんたちが口々に俺を出迎えてくれる。それこそ呼び捨てでいいのに、ここの人たちは武市のそばにいるってだけで俺にも丁寧に接してくれる。
玄関が目に入ったちょうどそのとき、その玄関が勢いよく開いた。
「ジイチャ……久しぶ……!」
挨拶は最後までさせてくれなかった。大きな身体が俺をぎゅうぎゅうと締め付けている。七十を超えているとは思えない力だ。
「ジイチャン苦しいって!」
「遅い! ぼん、おまえ高校になってから滅多にこっちに顔出さんじゃないか! 盆以来じゃぞ! 武市のとこばっかりおらんで、たまにはコッチに泊まりにくればええんじゃ」
「ごめん。でも、ここからだと高校まで通えないし……」
それに、武市から、ここには頻繁に行かないようにって言われているから。とは、さすがに言えなかった。
ここは本宅と呼ばれていて、いうなれば武市の実家だ。俺がジイチャンと呼ぶこの元気な老人は、もちろん俺の実の祖父ではなくて、武市の親父さんだ。俺は、それはもう大事に、いささか過剰なほど可愛がってもらっている。
「おやっさん、ここじゃなんですし、中でゆっくり……」
いかつい顔のオッサンが微笑ましく目尻を下げてジイチャンに声をかけている。
「馳さん、お久しぶりです!」
「ぼん、大きくなりましたな」
ますますオヤジさんに似てきましたね。馳さんが思い出したのか目を細める。ここにいるのは、俺の家族みたいな人たちなんだ。一般的にはヤクザってのは悪いイメージで、もちろん武市だってサラリーマンみたいな生活をしているわけじゃない。けど、ひとりになった俺を迎え入れてくれたのはここの人たちで、それは間違いなく俺にとって幸せなことだったんだ。
正直、俺は武市がどんなことをしているのか詳しくは知らない。武市は俺になにも言おうとしないし、どちらかというと俺をヤクザの世界からは一歩離そうとしているみたいだ。だから、本宅にも必要以上に近寄るなって言う。俺がここにいることが、いろんな人の目に止まるのは良くないからっていうのが武市の言い分だ。
確かに、俺がこの世界に入るんじゃないなら仕方のないことだと思うけど、やっぱりちょっと寂しい。
「なぁ、ぼん。誕生祝いはほんに自転車で良かったんか?」
「うん。ちょうど壊れて困ってたから」
ホントは駅前で盗まれたんだけど、それを言うとジイチャンは烈火のごとく怒るから黙っておく。
「祥真坊ちゃんおかえりなさい」
「元気そうですね!」
きれいに掃き清められた石畳を進む途中、いかつい兄ちゃんたちが口々に俺を出迎えてくれる。それこそ呼び捨てでいいのに、ここの人たちは武市のそばにいるってだけで俺にも丁寧に接してくれる。
玄関が目に入ったちょうどそのとき、その玄関が勢いよく開いた。
「ジイチャ……久しぶ……!」
挨拶は最後までさせてくれなかった。大きな身体が俺をぎゅうぎゅうと締め付けている。七十を超えているとは思えない力だ。
「ジイチャン苦しいって!」
「遅い! ぼん、おまえ高校になってから滅多にこっちに顔出さんじゃないか! 盆以来じゃぞ! 武市のとこばっかりおらんで、たまにはコッチに泊まりにくればええんじゃ」
「ごめん。でも、ここからだと高校まで通えないし……」
それに、武市から、ここには頻繁に行かないようにって言われているから。とは、さすがに言えなかった。
ここは本宅と呼ばれていて、いうなれば武市の実家だ。俺がジイチャンと呼ぶこの元気な老人は、もちろん俺の実の祖父ではなくて、武市の親父さんだ。俺は、それはもう大事に、いささか過剰なほど可愛がってもらっている。
「おやっさん、ここじゃなんですし、中でゆっくり……」
いかつい顔のオッサンが微笑ましく目尻を下げてジイチャンに声をかけている。
「馳さん、お久しぶりです!」
「ぼん、大きくなりましたな」
ますますオヤジさんに似てきましたね。馳さんが思い出したのか目を細める。ここにいるのは、俺の家族みたいな人たちなんだ。一般的にはヤクザってのは悪いイメージで、もちろん武市だってサラリーマンみたいな生活をしているわけじゃない。けど、ひとりになった俺を迎え入れてくれたのはここの人たちで、それは間違いなく俺にとって幸せなことだったんだ。
正直、俺は武市がどんなことをしているのか詳しくは知らない。武市は俺になにも言おうとしないし、どちらかというと俺をヤクザの世界からは一歩離そうとしているみたいだ。だから、本宅にも必要以上に近寄るなって言う。俺がここにいることが、いろんな人の目に止まるのは良くないからっていうのが武市の言い分だ。
確かに、俺がこの世界に入るんじゃないなら仕方のないことだと思うけど、やっぱりちょっと寂しい。
「なぁ、ぼん。誕生祝いはほんに自転車で良かったんか?」
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