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あらら

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次郎の忘れ物

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次郎には、発達障害があり、こだわりが強い。

しかし自分では自覚していない。

ぴょん!の詩を読んだ瞬間に光が書いたとすぐに分かった。

自分の世界観に女の子が足を踏み入れて来るなど初めての体験だった。
光は誰が見ても綺麗で美少女である。

キスをされた瞬間、息が止まった。

次郎は自分の気持ちを悟られないようにした。

本当はドキドキしていた。

屋上で、ぴょん!の音楽を聴きながら次郎は光の細長くて白い指に触れた。

光は、ビックリした顔をして次郎の顔を覗き込んだ。

次郎は、そのまま光にキスをした。

時が止まり時間が逆行するかのように次郎の胸は華やいだ。

それから、次郎は教室に姿を現し始めた。

授業には、全く付いていけなかったが光が渡してくれたノートの問題を解くと何故かテストで満点を取れた。

そうすると、親も、教師も次郎を見る目がガラリと変化した。

やればできる子という感じである。

今まで光に出会うまでは、自分の世界は自室から零れる夕日だけだった。

次郎に神様が光という女の子をプレゼントしてくれたんだと感じた。

屋上で、昼休み光と次郎が話していると女子が集まって来るようになった。

光も次郎もいつの間にか人気者になっていた。

しかし、次郎も光もマイペースなので何も二人の間には変わるものは無かった。

そこに亜星が、割って入って来た。

次郎は、光の元彼が現れたのは衝撃的だった。

亜星は、光を見て

「笑えるじゃん?」

と言った。

光は、亜星の頬を叩いた。

「次郎といるから笑えるようになった!あんたなんてもういらない!」

次郎は、呆然として二人を見ていた。

「まぁ、そう言うなよ、セックスお前らしたのか?」

亜星は、次郎と光を交互に見て聞いてきた。

「何だよ、セックスもしてなくてお互い好きなんて子供だな。」

亜星は、そう言い残して屋上から出て行った。

それから、亜星は次郎が一人でいる時に声をかけてきては、

光の体は、エロチックで最高だぜ。

などと吹き込んで来た。

次郎は、経験がないので戸惑った。

中学生でセックスなんて…次郎には信じられなかった。

体だけは、大きいが精神年齢は恋を知ったばかりの子供なのだ。

亜星の言った通りだと次郎は思った。

次郎は、光の姿を直視しないで空を見て隣で話すようになった。

「亜星が言った事、気にしてる?」

光は次郎に聞いた。

「べ、別に!」

声が裏返った。

「気にしてるんだ…。」

光は、ため息をついた。

数日前に亜星が俺達、兄弟になるかもなと言って来た。

どういう意味か次郎には分からなかった。

「気にしてないし、光は光だから、このままの関係でいたい。」

「ふーん、次郎はタフだね。」

そんな事はなかった。

次郎だって男である。

妖艶な光が側にいるだけで誘惑に負けそうになる。
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