砂漠のグラウンド

あらら

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哲を殴りつけて自宅謹慎処分を受けた雫は家のベッドの上で寝転がりながらスマホのあるアプリのコミュニティサイトにアクセスした。狂は馬鹿にしてきた。雫は無視して趣味の合いそうな人物を探して社会人を装ってビール好きの二十四歳のOLにメールを送った。「ビール好きなんですか?」という質問メールをした。

雫にとってビールは狂のようになれる自分に酔いしれる代物だった。初めて飲んだ時はあまりの不味さと苦さに引いたが酔うという世界の扉を開けてアルコールとはなんて素晴らしい物だと思った。理科の実験室でじっと待っているアルコールランプは哀れだとさえ思えた。素晴らしい世界に誘うビールに雫は酔狂している。

嫌な事や、眠れない夜があると父のビールを冷蔵庫からくすねたり帽子を被ってコンビニにビールを買いに行ったりしていた。日本酒はアルコールの度数が高すぎて飲んだ後にゲーゲー吐いた。狂は、その雫の姿を見てゲラゲラ笑っていた。

狂は、酒は嫌いで、女と暴力、イジメと煙草が好きらしい。たまに老け顔のゴレムをパシらせて煙草を買いに行かせている。自販機で買う時はゴレムは自分の父親の認証カードを使って法の目を掻い潜って煙草を買って来る。世の中便利になったのか不便になったのか分からないと狂は怒ってゴレムを蹴り飛ばしていた。

「ビール好きですよ。」という返信メールが来たのは雫がメールをしてから二、三日経過してからだった。「良かったら、今度、飲みに行きませんか?」と雫は思い切ってメールをしてみた。期待半分、冗談半分だった。
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