英雄に幼馴染を寝取られたが、物語の完璧美少女メインヒロインに溺愛されてしまった自称脇役の青年の恋愛事情

灰色の鼠

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第2章 主要人物として

第35話 「襲撃者らと、単独行動」

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 朝の登校の話。
 絡まれたことをドロシー達に話した日以来、通学路を歩く俺の周囲を三人の人物が囲うようになっていた。

 一人目。
 常時ポーカーフェイスの護衛リール。
 二人目。
 腕をガッシリ抱いている少女ドロシー。
 三人目。
 誰も寄せ付けない形相をした不良ギルバート。

 リールはさておき俺のためにわざわざ時間を合わせてくれた二人には申し訳ない。初めは断ったのだがギルバートにダチを守るのが俺のポリシーだと、格好いい台詞を投げかけられたので思わずキュンとなってしまった俺は了承するしかなかった。

 周りから見たら最強のメンツ揃いだろう。
 俺は完全に浮いているけど。
 歩くたび他に通学している生徒らに見られコソコソ話をされて恥ずかしい。

「———あの、みなさん。ちょっと厳重すぎやしませんか?」
「初日から頭をかち割られそうになった奴が何言ってんだよ。たとえ絡まれたとしても味方が多い方が効率的だ。お前に手ぇ出す奴は俺がまとめてぶっ殺してやる」

 獲物を狙う猛獣のようにあたりに注意をむけるギルバートが言った。確かに一理あるが、このメンツなら一人に護衛をされても十分なぐらいだ。

「ぶっ殺さなくてもいいですから」
「ええ、半殺しにしましょ」
「おお! なるほど!」

 穏便に済ませるかと思いきやドロシーも恐ろしい提案をし、それに納得するギルバート。
 ダメと言っても引き下がってくれないだろう。むしろ感謝した方がいいのでは、俺のためにやっていることだし。

(……過激だけど)

「私一人だけで十分です。部外者は速やかに離れてください、危険です」

 二人を邪魔に思ったリールが遠ざけようとする。その言葉を気に入らなかったのかドロシーとギルバートが明らかに不機嫌になって彼女に詰め寄った。

「私たちは彼のクラスメイトなのよ。関係ないどころか、恋人友人関係なんですけど。守る権利は私たちにだってあるわ」
「同感だ。そういうお前は主人さまに尻尾を振って親しくもない相手を守っていて虚しくならねぇのか?」
「仕事ですので」
「なら今日はお休みだ、どっかに行きな」
「敵ですね、貴方も排除いたしましょ」

 ギルバートとリールが戦闘態勢に入った。初対面なのに何故こんな喧嘩するのかは謎だが、身を挺して止めにはいる。

「二人ともお気持ちは有難いですが。他の生徒の目もありますし、リールさん学院長に怒られてしまいますよ?」
「うっ……確かに」
「ギルバートさんもただでさえ問題を起こして特別教室に移動されたのですから、これ以上騒ぎを起こしたらマズイですよ」
「……お前が言うなら」

 なんとか納得してくれたので一安心だが。ドロシーはどうだろうか、さっきから何処かをぼーっと一点に見つめているのだけど何かあるのか。
 と彼女の視線を辿ると。



「ヘリオスくん避けて!!」

 ドロシーに押される。同時に横髪をなにかが削った。その何かが背後にあった木に着弾し広範囲の爆発を起こす。ギルバートがとっさに盾になってくれた。

 ドロシーもリールも防御魔術で周囲の生徒らの身を守り、おかげで爆発の被害をゼロ人に抑えることができたが、完全に俺単体を狙った攻撃だった。
 誰なのかと飛んできた方向へと視線を向ける。そこには五年目の制服を着た上級生徒が満更もない顔で立っていた。
 アイツが攻撃をしたのか。なぜ周りの目がある通学路で仕掛けてきたという疑問の前にドロシーの周囲に膨大な魔力が集まっていた。
 彼女を中心に曇った雲が歪な形を成しながら聞き覚えのある音を響かせた。

「———唸れ天空の支配よ、者雷電《グロームレイ》」

 辺りが光に包まれたのは一瞬の出来事。
 視界がもとの状態に戻るともに響き渡るのは身体が震えるほどの雷鳴。
 自分らに攻撃してきた生徒にドロシーは雷を落としたのだ。

「……仕留め損ねたわ」

 息を呑み雷の落とされた位置を見るが残骸はない。ドロシーも殺さないよう威力を抑えたつもりなのだろうが仇になったようだ。
 すぐ近くにいないのかを探すため周囲に目を向け警戒をするが姿や気配が完全になくなっていた。




「——— !!!」

 しかし油断していたところを狙われたのかすぐ背後にある建物の屋根からの攻撃を受けてしまう。間一髪で気づいたリールが自身の身を挺して壁になった。いつもの無機質な彼女はそこにはいなかった。

 圧縮された風の弾丸がリールの胸部に命中した。
 血飛沫が飛び散り風の弾丸が四散する。

「がっ……は……はぁ……」

 俺を守った少女はモロに攻撃を受けた胸部から流れる血の量を出来るだけ減らすために手で押さえながら、倒れまいと堪えていた。
 その後姿があまりにも痛々しかった。

「ボサッとしてんじゃねぇぞヘリオス!!」

 リールに声をかけようとしたところをギルバートが割り込み腕を掴まれる。

「でも……」
「相手は一人じゃなかった! 複数だ!! まだどこかに潜んでいるかもしれねぇ!!」

 そうだアイツらの狙いは俺だ。むしろこの場に留まっているほうが周囲の危険に繋がる。俺のせいでリールが……。





「ドロシー、ギルバートさんごめん!! リールさんを頼んだ!!」
「え、ヘリオスくん!?」
「おい何処に行くんだよ!!」

 三人から離れるために全力疾走で人気の少ない場所へと向かう。ここからは完全な単独行動だ。
 いつものように守ってくれる人は居ない。

 追っている、後ろから複数人の気配が。
 考えろ、考えろ、この状況を覆すのための効率的な発想を思いつかなければ、死ぬかもしれないんだ。

 真正面から、このまま立ち向かっても返り討ちにされるだけだ。



 ———その竜なんだが、彼こそが君の父親なんだよ。


 走馬灯のように流れる記憶の中で、つい最近ラケル師匠がしてくれた話を思いだす。
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