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第15話 「少女の行方は」
しおりを挟む泊まっている家の中は静寂に包まれていた。
アビゲイルさんが作業しているのは二階、どう見ても一階に降りた形跡はなく部屋の中は目新しいままだった。
鞘のおさめた剣を廊下の端に置き、仕方なく招き入れた少女をリビングに案内する。
お菓子類はないので旅で使っていたお茶だけを用意してテーブルに並べ、彼女と向かい合うようにソファーに座り込む。
「君、名前は?」
「シズと申します。無理言ってすみません、旅人さん」
田舎で育った村娘だという、偏見を捻じ曲げるほどの礼儀正しさに思わず唖然としてしまう。
こんなにも小さいのに、親の顔を見て自慢をしてみたいものだよ。
「……実は相談がありまして」
シズは深刻な顔を浮かべながら語り始めた。
「外では声を大にして言えませんでした。この村で助けてくれる人はもう……他所の者しかいませんから、どうか話だけでも聞いてください」
目の端から涙を浮かべるシズを見て思わず慌てた口調になってしまう。
「……わ、分かったから、落ち着いて話してくれ。話は聞いてやる」
「ありがとうございます……あれは数年前の出来事です」
四年前に遡ります。
あれはまだ私が八歳の時、まだ彼女がいた時です。
彼女の名前は『マリー』。
私の家のすぐ隣の家で生まれた子です。
幼馴染と言ってもいいでしょう。
私の唯一無ニの親友で、とても明るくて愛想のある村の人気者でした。
薔薇のような色の髪と瞳は珍しがられ、女神の御使いではないかと言われるほどまで村の人たちに愛されていたのです。
いや、事実、マリーには常人にはない人知を超えた能力を持っていました。
『未来視』
人を直視することによって未来を見通すことのできる眼を彼女は秘めていたんです。
ありとあらゆる事象の先を予想して的中させる力。
それに目覚めたマリーは、その能力を人のため世の中のために行使していこうと決めたのですが、村人の殆どがマリーが能力に目覚めたことを知らないま彼女は忽然と姿を消しました。
その代わり、村長は村の皆に告げました。
預言者が現れたと———
「君は神殿の預言者が、親友マリーかもしれないと思ったわけだ」
「かもしれないんじゃなくてマリーなんです!」
唐突にテーブルから身を乗り出しきたシズに圧倒されるが、自分の行動が失礼にあたることを理解したのか「すみません」と謝りながら座り直した。
「マリーのご両親はそれを知っているのか?」
「分かりません……村から出て行ってしまったからと村長が言っていましたので……」
なにかあったのは明らかだ。
村長はマリーの未来視に関連しており、それを村の繁栄のために宗教じみたことを行っている。
「あの子は四年も、あの地下に閉じ込められたまま……終わりの見えない役目を負わされるのです。そんなの……残酷すぎじゃないですか」
泣き出してしまうシズに、どのような言葉をかければいいのかが正解なのかはもうとっくに理解していた。
だが、そうなれば。
「この村が、もう君の知っている場所ではなくなってしまう。この村で起きている出来事を白日の下に晒せば、きっと皆んな失望して人が変わるかもしれない。それでも良いのか?」
シズに尋ねる。
不安にさせるのが意図ではない、彼女の覚悟がどれくらいのものなのかを見たかったからだ。
そして、シズは期待通りの瞳をみせる。
「マリーの為なら……こんな村なんて壊してやりますよ」
何もできなかった後悔を取り戻したいという意思を肌身に感じた。
子供だというのに四年間も悩んでいたんだ。
忘れることもなく、ずっと。
「俺に任せろ」
そう言いながら微笑んでみせた。
———
『忠信の聖騎士』
二十人が座る円卓。
その一角である聖騎士がカリヤの少ない手がかりを頼りに、数百もの屈強な騎士を率いてカリヤの経由したであろう道を沿って進んでいた。
「———いやぁ。無敗の騎士の実力が如何なるものか、心躍りますねぇ」
凶悪に微笑みながら、聖騎士は楽しげに呟くのだった。
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