魔王を生かしたことでパーティの密告によって死刑された英雄—じつは魔王に惚れられ蘇生してくれたので結婚し、順風満帆な人生を送りたいと思う—

灰色の鼠

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第9話 「かつてのパーティメンバー」

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 三年前。
 王国直々に編成されたパーティ。
 当時十六歳だったルーディンは王宮に招かれた時。
 知らぬ顔のメンツと組むことになって、彼は困惑していた。

 対魔王討伐部隊。
 と大げさに命名されたパーティは全員で五人。

 灼煉《しゅくれん》の剣王のアレク・カイマン。
 慈愛の弓女《きゅうじょ》ジリス・リーベルト。
 黄泉の魔術師リューゲル・ゲルメン。
 光鉄球《てっきゅう》の剛侍女グレイ・アリエス。

 そして救済の英雄ルーディン・アヴニール。

 国王陛下の勅令に異論をは許されない。
 五人は与えられた使命に従う他なく、報奨金も多めにもらえるので断ろうとする者はいなかった。

 もうじき訪れるであろう魔王軍との大戦に備えるため五人は連携強化、互いの能力把握のために冒険者ギルトに赴くのだった。
 まず冒険者登録をしなければならなかった。

 待合場所もあったが、それでは退屈なので自称リーダーのアレクが酒場で祝おうという提案をだした。
 すでに公表されたせいか周囲の冒険者からの視線が想像を絶していた。
 テーブルを囲みそれぞれが杯を持ちあげる。

「はい、乾杯!」
「「カンパーイ!!」」

 ジリスとリューゲル、アレクの三人がお祭り状態だ。
 ルーディンは仲間となるアレク達となんとなく乾杯をしたが、彼はこの空気に馴染んでいない様子のグレイに親近感を覚えていた。

 一応、乾杯はしているものの恥ずかしそうに俯《うつむ》いたままである。

「俺はアレク。西では剣術負けなしで有名なんだが、いわれずともここにいる皆はもうご存じの様子かな?」

 自信満々にアレクが自己紹介。
 ルーディンは自国に固執していたので、他国の猛者を完全把握していたわけではなかったが名前ぐらいは以前聞いたことがあった。

 赤髪でチャラそうだ。
 苦手な人柄ではなかったが、人の言うことを聞かなそうなタイプである。
 気のせいか、グレイばかりに顔を向けているような気がしてならなかった。

「私《あたし》はジリス。西南の聖神国で聖術やら歴史やらを学んできて、王国騎士団では弓兵の兵長を二年も務めてきたベテランでございます。気軽にジリスちゃんと呼んでね♪」

 露出の高い装備のジリスが自己紹介。
 酒場でも注目をひときわ浴びていたが何ともない様子だ。

「あっと~、夜のお遊びも得意なので指名はご自由よ♪」

 なぜなら彼女はビッチだからだ。
 いつも違う男と宿屋に泊まっており、決まって彼女は夜の営みをほかの仲間たちと共有するのだ。

「僕は魔術師リューゲル。魔術学院を主席で卒業していますので期待をしてくれてもいいですよ。戦略戦術もなんでもお任せってね」

 さわやかな好青年だ。
 名前はもちろん知っている。
 巷《ちまた》ではさまざまな功績を挙げているおかげか、至上の魔術師に与えられる称号『星の境界』に一歩近づいているらしい。

「わ………わた……私はグレイと申します………光鉄球と呼ばれています………重い武器なら、何でも得意です」

 気の弱そうな娘だ。
 魔王討伐を主軸としたパーティに選ばれた逸材の一人だ。
 いくら小柄で子供のようにしか見えなくても偏見はよくない。

 そして最後に。
 酒ではなくリンゴジュースとアップルパイを黙々と食す青年。

 救済の英雄と呼ばれており、頼めばほとんど断ることがないお人好しで有名だ。
 なにより強い、勇者にも引けをとらない実力の持ち主である。

 年齢以上の背丈をもっており、大人のような雰囲気を漂わせていた。
 これから冒険者ギルドで依頼を受けるというのに武器も装備していない、それなのに脊椎まで駆け巡るほどの強大な力が感じ取れるのだ。

「ルーディンだ、困ったことがあれば声をかけてくれ。できる限りは協力をする」

 こんな時でも人助けとは。
 グレイを除いた三人が苦笑いしていた。
 能力は確かだが、人助けだけで生計を立てていた男が自分らには敵わない。
 そう思っていた。

 けどパーティメンバーならば、いくら弱かろうと支えてあげるのが仲間というものだ。
 密かに決意するアレク達だった。

 良いパーティかもしれない。
 この先も、このメンツなら上手くいく。
 平和を取り戻すために戦うのが自分たちの使命なのだ。





 ———そう長くは続かないとは、知らずに。







 あるキッカケが、アレクたちを壊した。
 生まれたのはルーディンに対しての殺意。

 敵への殺意である。
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