48 / 52
誘拐少女と探偵
16話
しおりを挟む
月乃ちゃんを連れてここから逃げ出す。
一晩考えた結果、僕はそう決断した。
紅坂さんを完全に黒と決めつけたわけではないが、疑念が消えない以上、逃げ場のないこの部屋にいつまでも留まっていては、襲い来る災厄から自分自身や月乃ちゃんを守ることはできない。僕の勘違いだったとしたら、後で笑い話にするだけの話だ。
脱出の時間だが、夕食を終えた男が外出するタイミングがベストだろう。これまでの経験から、家を空ける時間はどんなに短くても一時間半はある。それだけあれば逃げるには十分だ。
問題は昨日のように外出していると思っていた男がまだ家に中にいて鉢合わせしてしまう可能性があることだ。同じミスを犯さないよう、慎重に行動する必要がある。
あれこれと考えて迎えた本番。
何度も脳内でシミュレーションを繰り返してから臨んだが、結果的からいうと計画は失敗に終わった。
原因は僕が危惧していた男との遭遇ではなく、月乃ちゃんだった。後は彼女とともにここから出るだけという段階で、月乃ちゃんはが大暴れしたのである。
その様子を見て、僕は大事なことを失念していたことに気が付いた。
そもそも僕がここで大人しく囚われの身になることを選んだのは、月乃ちゃんが家の外に行くことを嫌がったからだった。逃げ出そうとすればこうなることは、初めてこのマンションを訪れた日に体験していたはずだ。
尋常でなく取り乱している月乃ちゃんを前に、計画は断念せざるを得なかった。
月乃ちゃんを宥めすかしているうちに男が帰宅し、逃げ出すことはできなかった。
仕方がないので、今日も紅坂さんへの報告をボイコットしただけで終わった。二日続けて連絡が途絶えた状況を怪しまれる可能性は大いにある。明日にでも紅坂さんが僕らの様子を窺いにやってくることを考えると、残された時間はほとんどない。焦りが募っていく。
いろいろと考えた結果、寝静まった月乃ちゃんを抱きかかえて脱出するしかないという結論に至った。寝ている彼女を連れて脱出してしまえば、起きてから月乃ちゃんがどれほど喚こうが、いくらでも時間を使って宥めればいい。
可哀そうではあるが、背に腹は代えられない。
となると、脱出は深夜に実行することになる。当然、男が室内にいる状況で実行することになる。男が寝床についてから深い眠りにつく時間帯を待ち、物音一つ立てずに行動する必要がある。大きな音を出せば、最悪の事態を招くことになるだろう。
一晩考えた結果、僕はそう決断した。
紅坂さんを完全に黒と決めつけたわけではないが、疑念が消えない以上、逃げ場のないこの部屋にいつまでも留まっていては、襲い来る災厄から自分自身や月乃ちゃんを守ることはできない。僕の勘違いだったとしたら、後で笑い話にするだけの話だ。
脱出の時間だが、夕食を終えた男が外出するタイミングがベストだろう。これまでの経験から、家を空ける時間はどんなに短くても一時間半はある。それだけあれば逃げるには十分だ。
問題は昨日のように外出していると思っていた男がまだ家に中にいて鉢合わせしてしまう可能性があることだ。同じミスを犯さないよう、慎重に行動する必要がある。
あれこれと考えて迎えた本番。
何度も脳内でシミュレーションを繰り返してから臨んだが、結果的からいうと計画は失敗に終わった。
原因は僕が危惧していた男との遭遇ではなく、月乃ちゃんだった。後は彼女とともにここから出るだけという段階で、月乃ちゃんはが大暴れしたのである。
その様子を見て、僕は大事なことを失念していたことに気が付いた。
そもそも僕がここで大人しく囚われの身になることを選んだのは、月乃ちゃんが家の外に行くことを嫌がったからだった。逃げ出そうとすればこうなることは、初めてこのマンションを訪れた日に体験していたはずだ。
尋常でなく取り乱している月乃ちゃんを前に、計画は断念せざるを得なかった。
月乃ちゃんを宥めすかしているうちに男が帰宅し、逃げ出すことはできなかった。
仕方がないので、今日も紅坂さんへの報告をボイコットしただけで終わった。二日続けて連絡が途絶えた状況を怪しまれる可能性は大いにある。明日にでも紅坂さんが僕らの様子を窺いにやってくることを考えると、残された時間はほとんどない。焦りが募っていく。
いろいろと考えた結果、寝静まった月乃ちゃんを抱きかかえて脱出するしかないという結論に至った。寝ている彼女を連れて脱出してしまえば、起きてから月乃ちゃんがどれほど喚こうが、いくらでも時間を使って宥めればいい。
可哀そうではあるが、背に腹は代えられない。
となると、脱出は深夜に実行することになる。当然、男が室内にいる状況で実行することになる。男が寝床についてから深い眠りにつく時間帯を待ち、物音一つ立てずに行動する必要がある。大きな音を出せば、最悪の事態を招くことになるだろう。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
四次元残響の檻(おり)
葉羽
ミステリー
音響学の権威である変わり者の学者、阿座河燐太郎(あざかわ りんたろう)博士が、古びた洋館を改装した音響研究所の地下実験室で謎の死を遂げた。密室状態の実験室から博士の身体は消失し、物証は一切残されていない。警察は超常現象として捜査を打ち切ろうとするが、事件の報を聞きつけた神藤葉羽は、そこに論理的なトリックが隠されていると確信する。葉羽は、幼馴染の望月彩由美と共に、奇妙な音響装置が残された地下実験室を訪れる。そこで葉羽は、博士が四次元空間と共鳴現象を利用した前代未聞の殺人トリックを仕掛けた可能性に気づく。しかし、謎を解き明かそうとする葉羽と彩由美の周囲で、不可解な現象が次々と発生し、二人は見えない恐怖に追い詰められていく。四次元残響が引き起こす恐怖と、天才高校生・葉羽の推理が交錯する中、事件は想像を絶する結末へと向かっていく。
校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話
赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)
アルファポリス投稿ガイドラインについて
ゆっち
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスでの利用規約、投稿ガイドラインについて考察。
・2024年3月からスコア切り始まる。
・ptが高いのに0スコアになるのは何故?
・一定の文字数が必要
曖昧で解らない部分は運営様に問い合わせ、規約に則った投稿を心掛けています。
神北高校事件ファイル0 名探偵はまだいない
ずんずん
ミステリー
夏期合宿で愛媛県の離島を訪れた榎田達神北高校柔道部だったが、そこで第一の死者が発見された。台風の接近により警察も呼べず島外脱出も不可能に……。
雨上がりの蝶
藤極京子
ミステリー
山奥にあるコテージに、毎年恒例で訪れた四組の家族。
子供達も大きくなり、四組の家族が揃って集まるのは今年で最後であろう。
これから二泊三日の楽しいキャンプ生活が始まる筈であった――。
日中は快晴で天気予報も数日晴れが続くと云っていたが、初日の夜からの嵐で身動きが取れずコテージに閉じ込められてしまった人間達。
豪雨に紛れて突如響く轟音。
外界への唯一の道を失った一同に暗雲が立ち込める。
天地を味方につけた殺人鬼の宴が、今始まろうとしていた。
※縦読み推奨※
今から15年程前に『横溝正史ミステリ大賞』に何の迷いか――多分若気の至り――応募した作品です。
プロットノートもコピーした草稿も紛失して、タイトルすら忘れてしまった作品ではありますが、大まかな内容は覚えているので、多分少しは当時から比べて成長しただろう現在、もう一度最初から書いてみよう! と思い至った次第です。
当時、締め切り前日まで書いてて、いざ出そう! と郵便局に行った所で1次選考で必要な概要を書き忘れているのに気付き、慌てて原稿3枚書く……なんて、ミスしまくって( TДT)良い思い出です。。。
因みに、想像はつくでしょうが、1次選考すら通らなかったです。
タイトルはかなり適当に付けてしまいました。もしかしたら、途中でタイトル変わっているかも?
こんな裏事情?がある作品ですが、どうぞよろしくお願いしますです。
角川書店「カクヨム」さんでも載せてるってよ!
令嬢諮問魔術師の事件簿
真魚
ミステリー
同作品を「小説家になろう」にも投稿してあります。
11月4日、ジャンル区分を「ファンタジー」から「ミステリー」に変更いたしました。
以下あらすじ
1804年英国をイメージした架空の西洋風世界。魔術のある世界です。
アルビオン&カレドニア連合王国の首府タメシスの警視庁が任命する「諮問魔術師」唯一の女性、エレン・ディグビー26歳が、相棒のサラマンダーのサラと共に事件捜査にあたります。
第一話「グリムズロックの護符事件」
タメシスのスラム街サウスエンドの安宿で、娼婦と思われる若い女が首を斬られて死んでいるが見つかります。死体の傍には、良家の令嬢が持つような、魅了魔法よけの護符が残されています。
その真偽を確かめるために、駆け出しの諮問魔術師エレンが呼ばれます。
第二話「ターブの魔鏡事件」
エレンの事務所を、連合王国でも指折りに富裕な大貴族、コーダー伯爵夫人レディ・アメリア・キャルスメインが密かに訪れてきます。
レディ・アメリアには秘密がありました。結婚前の18歳のころ、保養地ターブで出会った魔術師兼画家のアルフレッド・デールと密かに恋に落ちていたのです。
しかし、アメリアがコーダー伯爵家に嫁ぐことになったため、デールはアメリアに、一年に一度だけ互いの顔を見ようと申し出て、魔術のかかった鏡を渡します。
レディ・アメリアは三十年来ずっと、毎年一度、かつての恋人の貌を鏡のなかに見て思い出を偲んできました。しかし、今年、決められた日にその鏡をのぞくと、額から血を流して死んでいるデールの顔が映っていたのです。
エレンはレディ・アメリアに頼まれて、デールの生死を確かめるべく、保養地ターブへと向かいます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる