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この中に魔女がいる
5話
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部屋から戻った面々は席についた。
しばらくの間は誰も口を開こうとせず、応接室は静まり返っていた。男子高校生にいたっては放心状態といった様子でうつ向いている。一緒に旅行に来た従弟が死んでしまったのだから当然ではある。
沈黙を破ったのはやはり神藤だった。
死体のあった部屋に入らなかった彼女に部屋の様子を伝える。
男子高校生の従弟で彼がタケルと呼んでいた少年はベッドの上に仰向けで横たわっていた。眠っているわけではないことは、胸から溢れ出たおびただしい量の血が物語っていた。
血はすでに固まっており、シャツやシーツは黒く固まっていた。息がないことを確かめるまでもなく、彼は絶命していた。
部屋の中に誰かと争った形跡はなく、おそらくは寝ているところを心臓を一突きにされたのだろう。死体は冷たかったが、死亡解剖に関する知識を持ち合わせた人間などいるはずもなく、死んだ時間を割り出すことはできなかった。
最大の謎は部屋が密室になっていたことだ。
鍵が掛かっていたことは俺自身が確認している。就寝前にタケルが内側からロックしたのだろう。
当然だ。館内で人殺しがあったのに開けっ放しにする人間はいない。
つまり、鍵のかかった扉の向こうでタケルは殺されたということになる。一体だれがどんな芸当を使ったというのか。見当がつかない。
「ねえ、私たちこれからどうすればいいの?」
神藤の彼女が彼に縋るように聞いた。腕を掴む手は震えている。
「部屋に戻ろう」
神藤は彼女の手を引くと立ち上がった。
そして棚に置かれた段ボールの中に食品を詰めだす。
「何をしているんですか?」
勝手に食料を持ち出そうとしている神藤に声をかける。
「魔女なんて信じちゃいないが、この中に人殺しがいることは確かだ。俺たちは助けが来るまで部屋に籠らせてもらう」
リーダーの突然の宣言に困惑する。てっきりこの後も神藤が俺たちを先導してくれると思い込んでいた。一抜けされるなんて想定外だった。
「助けが来るのだっていつになるかわかりません。ここは全員で協力すべきです」
「馬鹿言うな。人殺しと協力なんてできるか。幸い食料は十分ある。君たちの分は残していくから、あとは好きにするといい。言っておくが、部屋に来たところで俺たちがドアを開くことはないからな」
俺の静止を振り切って二人は二階の自室へと戻ってしまった。
部屋には俺と夜子と男子高校生の三人が残された。
まいったな、と俺は頬をかく。
神藤に代わってリーダーになれる人物がいるだろうか。俺は残りの二人を覗き見る。
俺と目が合った夜子は「困りましたね」と言わんばかりに苦笑いを浮かべた。言葉とは裏腹にあまり深刻そうには見えない。
男子高校生のほうは未だ心ここにあらずといった状態だ。焦点の合わない視線で床を見つめ続けている。神藤たちがいなくなったことにすら気づいていないかもしれない。
適任は見当たらない。
俺も神藤たちと同じように部屋に引きこもってしまおうか。そう考えてみたが、それはできない。俺にはまだ、やらなければいけないことが残っている。
仕方ない。俺は心の中でため息を吐いた。
自分がまとめ役なんて柄ではないのは百も承知だけれど、観念して二人に向き合う。
「ここにいない神藤さんたちと自称兄妹の四人を除いた俺たち三人で、なにができるか考えてみよう」
しばらくの間は誰も口を開こうとせず、応接室は静まり返っていた。男子高校生にいたっては放心状態といった様子でうつ向いている。一緒に旅行に来た従弟が死んでしまったのだから当然ではある。
沈黙を破ったのはやはり神藤だった。
死体のあった部屋に入らなかった彼女に部屋の様子を伝える。
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血はすでに固まっており、シャツやシーツは黒く固まっていた。息がないことを確かめるまでもなく、彼は絶命していた。
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当然だ。館内で人殺しがあったのに開けっ放しにする人間はいない。
つまり、鍵のかかった扉の向こうでタケルは殺されたということになる。一体だれがどんな芸当を使ったというのか。見当がつかない。
「ねえ、私たちこれからどうすればいいの?」
神藤の彼女が彼に縋るように聞いた。腕を掴む手は震えている。
「部屋に戻ろう」
神藤は彼女の手を引くと立ち上がった。
そして棚に置かれた段ボールの中に食品を詰めだす。
「何をしているんですか?」
勝手に食料を持ち出そうとしている神藤に声をかける。
「魔女なんて信じちゃいないが、この中に人殺しがいることは確かだ。俺たちは助けが来るまで部屋に籠らせてもらう」
リーダーの突然の宣言に困惑する。てっきりこの後も神藤が俺たちを先導してくれると思い込んでいた。一抜けされるなんて想定外だった。
「助けが来るのだっていつになるかわかりません。ここは全員で協力すべきです」
「馬鹿言うな。人殺しと協力なんてできるか。幸い食料は十分ある。君たちの分は残していくから、あとは好きにするといい。言っておくが、部屋に来たところで俺たちがドアを開くことはないからな」
俺の静止を振り切って二人は二階の自室へと戻ってしまった。
部屋には俺と夜子と男子高校生の三人が残された。
まいったな、と俺は頬をかく。
神藤に代わってリーダーになれる人物がいるだろうか。俺は残りの二人を覗き見る。
俺と目が合った夜子は「困りましたね」と言わんばかりに苦笑いを浮かべた。言葉とは裏腹にあまり深刻そうには見えない。
男子高校生のほうは未だ心ここにあらずといった状態だ。焦点の合わない視線で床を見つめ続けている。神藤たちがいなくなったことにすら気づいていないかもしれない。
適任は見当たらない。
俺も神藤たちと同じように部屋に引きこもってしまおうか。そう考えてみたが、それはできない。俺にはまだ、やらなければいけないことが残っている。
仕方ない。俺は心の中でため息を吐いた。
自分がまとめ役なんて柄ではないのは百も承知だけれど、観念して二人に向き合う。
「ここにいない神藤さんたちと自称兄妹の四人を除いた俺たち三人で、なにができるか考えてみよう」
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