164 / 173
# 冬
運命のヒト⑦
しおりを挟む
戸部君が一瞬、言葉にするのを躊躇した。
そして、不安そうな私の目を見つめると、ニヤリと口元を緩ませる。
その表情で、この後何を発言するかわかってしまった。
「俺と別れて、林田勇気の下に行くんだよ」
わかっていたとはいえ、頭の中は混乱する。
困惑している私と、無理に笑顔を作っている戸部君の、心の中は同じ悲しさがこみ上げているはずだ。
何を言葉にすればいいか……自分を見失っていた時、入来ちゃんの言葉が頭に響いた。
『中途半端に向き合わないこと』と『強い気持ちを持つこと』の、その二つの言葉が。
話さないと。きちんと正面から、戸部君と話さないと。
「私は……戸部君に何度も救われてきた。そんな戸部君と別れるなんて、できないよ」
私の発言に、戸部君は一瞬困った顔をしたけど、気持ちを変えることはないみたいだ。
一向に譲る気はないのが、顔つきから伝わってくる。
「いいんだよ、俺はもう踏ん切りがついたから」
「勝手につけないでよ」
「勝てないんだよ!!」
突然上がった声のボリュームで、その後のセリフを返すことができずに、息を飲んでしまった。
少し間を開けてから、その言葉の真意に迫る。
「勝てないって……どういうこと?」
「勝てないんだよ、林田勇気には。サッカーで一緒になった時も、あいつにはひっくり返っても敵わないって思った。今だってそうだ。ナオちゃんを想う気持ちだけは、負けないつもりだったのに」
「戸部君の気持ち、ちゃんと届いてるよ!?」
「いや……いくら俺が想っても、林田勇気には勝てない。俺がナオちゃんを想う気持ちよりも、ナオちゃんが林田勇気を想う気持ちには、どうしても勝てないんだ」
「どうしてそう決めつけるのよ!?」
そして、不安そうな私の目を見つめると、ニヤリと口元を緩ませる。
その表情で、この後何を発言するかわかってしまった。
「俺と別れて、林田勇気の下に行くんだよ」
わかっていたとはいえ、頭の中は混乱する。
困惑している私と、無理に笑顔を作っている戸部君の、心の中は同じ悲しさがこみ上げているはずだ。
何を言葉にすればいいか……自分を見失っていた時、入来ちゃんの言葉が頭に響いた。
『中途半端に向き合わないこと』と『強い気持ちを持つこと』の、その二つの言葉が。
話さないと。きちんと正面から、戸部君と話さないと。
「私は……戸部君に何度も救われてきた。そんな戸部君と別れるなんて、できないよ」
私の発言に、戸部君は一瞬困った顔をしたけど、気持ちを変えることはないみたいだ。
一向に譲る気はないのが、顔つきから伝わってくる。
「いいんだよ、俺はもう踏ん切りがついたから」
「勝手につけないでよ」
「勝てないんだよ!!」
突然上がった声のボリュームで、その後のセリフを返すことができずに、息を飲んでしまった。
少し間を開けてから、その言葉の真意に迫る。
「勝てないって……どういうこと?」
「勝てないんだよ、林田勇気には。サッカーで一緒になった時も、あいつにはひっくり返っても敵わないって思った。今だってそうだ。ナオちゃんを想う気持ちだけは、負けないつもりだったのに」
「戸部君の気持ち、ちゃんと届いてるよ!?」
「いや……いくら俺が想っても、林田勇気には勝てない。俺がナオちゃんを想う気持ちよりも、ナオちゃんが林田勇気を想う気持ちには、どうしても勝てないんだ」
「どうしてそう決めつけるのよ!?」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる