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# 秋
グレープフルーツの香り⑦
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「あ、今日お店手伝わなきゃいけない日だった! 先帰るね!」
入来ちゃんが、思い出したように走っていった。
道の落ち葉たちを気にせずに、どんどん足を前に動かしていく。
十秒もしないうちに角を曲がり、完全に姿が見えなくなると、私と戸部君は手を叩いて笑い合った。
「今の入来ちゃん、凄い顔だったよね!」
「戸部君、そんなに笑っちゃダメだよ。入来ちゃんに明日言っちゃうからね」
「ナ、ナオちゃんだって面白がってるじゃん!」
「戸部君ほどじゃないよー!」
久しぶりに、戸部君との間で、ゆったりとした時間が流れている。
私の中途半端な気持ちのせいで、距離を取らせてしまったのかもしれない。
無邪気な笑いが静まると、今度は一転して、無言の時間が二人を包み始めた。
何を話していいかわからない状況に切り替わると、脳が高速で回転する。
とにかく何かを口にしようと決めた瞬間、戸部君の足がピタッと止まった。
「ナオちゃん……」
駅までの人通りが多い道で、戸部君が私の名前を呼んだ。
その声で街の喧騒がミュートになり、戸部君の言葉だけが耳に入るようになった。
「戸部君、どうしたの?」
「これ、プレゼントしたくて」
広げた手の中に、ポトッと乗せたのは、今日先生からプレゼントされたエッセンシャルオイルだった。
戸部君はずっと握りしめていたのか、小瓶は人肌と同じ温度をしている。
「私に……くれるの?」
戸部君は照れ臭そうにしながら、鼻頭を赤らめていた。
もしかしたら寒さのせいかもしれないけど、きっと恥ずかしさを隠しきれないでいるのだろう。
入来ちゃんが、思い出したように走っていった。
道の落ち葉たちを気にせずに、どんどん足を前に動かしていく。
十秒もしないうちに角を曲がり、完全に姿が見えなくなると、私と戸部君は手を叩いて笑い合った。
「今の入来ちゃん、凄い顔だったよね!」
「戸部君、そんなに笑っちゃダメだよ。入来ちゃんに明日言っちゃうからね」
「ナ、ナオちゃんだって面白がってるじゃん!」
「戸部君ほどじゃないよー!」
久しぶりに、戸部君との間で、ゆったりとした時間が流れている。
私の中途半端な気持ちのせいで、距離を取らせてしまったのかもしれない。
無邪気な笑いが静まると、今度は一転して、無言の時間が二人を包み始めた。
何を話していいかわからない状況に切り替わると、脳が高速で回転する。
とにかく何かを口にしようと決めた瞬間、戸部君の足がピタッと止まった。
「ナオちゃん……」
駅までの人通りが多い道で、戸部君が私の名前を呼んだ。
その声で街の喧騒がミュートになり、戸部君の言葉だけが耳に入るようになった。
「戸部君、どうしたの?」
「これ、プレゼントしたくて」
広げた手の中に、ポトッと乗せたのは、今日先生からプレゼントされたエッセンシャルオイルだった。
戸部君はずっと握りしめていたのか、小瓶は人肌と同じ温度をしている。
「私に……くれるの?」
戸部君は照れ臭そうにしながら、鼻頭を赤らめていた。
もしかしたら寒さのせいかもしれないけど、きっと恥ずかしさを隠しきれないでいるのだろう。
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