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# 秋

文化祭⑥

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「お待たせ! 買ってきたよ!」

「え……」

 戸部君が両手に一つずつ持っているのは、お好み焼きとじゃがバターだった。
 花火大会の時、どれを買うか迷っていたのを、戸部君はしっかりと覚えていたようだ。
 あの時は結局焼きそばにしたけど、この二つは好物と言わざるを得ない。
 悔しさを滲ませながら、両手でそれらを受け取る。

「ちゃんと覚えてたよ。花火大会の時、俺が提示した三択でしっかり悩んでいたことを。この二つも焼きそばと同じくらい好きなんでしょ」

「ずるいよ戸部君、勝算があって仕掛けたんだね」

「まあね! そんな睨まないでよ。これは俺の奢りだから」

「え、私の負けだけど」

「そんなの嘘だって、ほら、どこかで座って食べよう。冷めないうちに」

 何だか踊らされたみたいで、真剣にゲームのことを考えていた自分が可笑しく感じてくる。
 キャンパス内に入ると、模擬店で買った料理が食べられる、飲食スペースがすぐに見つかった。
 二人でシェアしながら食べていると、戸部君は私の顔を意地悪そうに覗く。

「何か顔についてる?」

「違うよ、何の言うこと聞いてもらおうかなってさ」

「え? 嘘だったんじゃないの!?」

「あれは本当だよ。俺が勝ったんだし」

「何それー! もう、何を聞いてほしいのよ?」

「どうしよっかなー、まあ、考えておくわ」

 不覚にも借りを作ってしまったことに、不貞腐れた表情をする。
 戸部君はそんな私を面白がって、食べるのを止めて笑い出した。
 その笑い声につられて、つい反抗的な顔を緩めてしまう。
 全て食べきってお腹が満たされると、催し物が開かれているステージに行くことにした。
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