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# 秋

クリスタル⑦

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 家に帰り、熱めのシャワーを浴びる。
 頭を洗いながら目を瞑ると、早速さっきまで岸井さんと歩いていた情景を思い出した。
 こんなにユウキのことを、考えたくなくなるなんて。
 ユウキのことを考えると、必ず岸井さんの存在が頭を過ぎるようになった。
 入来ちゃんから言われた通り、リフレクソロジストとしてだったら、まだユウキと向き合えると思っていたのに。
 ユウキたちにとっては、それさえも大きなお世話なのかもしれない。
 『好き』という感情が、霧の中に隠れていって、見えなくなった……。

 ベッドに入っても、岸井さんとの会話が頭から離れることはなく、入眠するまでかなり時間がかかった。

「おはよう、ナオちゃん」
 
 重たい瞼のままで今日も学校に着くと、相変わらず一番乗りの戸部君が挨拶をしてくれる。
 私は寝不足を悟られないように、明るい声を意識して返事をする。

「戸部君おはよう。今日も早いね」

「まあね、昨日習った反射区のおさらいがしたくてさ」

 純粋にリフレクソロジーを楽しんでいる戸部君を見ていると、何だか心が洗われるようだ。
 本来、大学進学せずにこの養成学校に通い始めたのは、ユウキのため。
 まさか半年で、こんなに複雑な関係になるとは思わなかった。
 でも、ユウキに彼女ができてしまったのは事実。
 ブレブレな気持ちのまま、中途半端に取り組んでいる自分が滑稽に思える。
 目の前で真剣に取り組んでいる、戸部君に見せる顔がない。
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