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# 夏

夏休みは合宿に⑪

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 考え方を見直そうか心の中で悩んでいた時、入来ちゃんが水滴が垂れている天井を見ながら語り出した。
 わかったこと? 入来ちゃんの失恋でわかったこととは、一体なんだろうか。
 参考になりそうな答えを期待して、興味津々な顔で答えを促した。

「何? わかったことって?」

「たぶんだけど、戸部君の好きな人、ナオちゃんだと思う」

「……え」

 恋愛において必要なものとか、失恋を乗り越える方法とか、そういう哲学的な答えを期待していたけど、全く予想していない内容だった。
 何と言っていいかわからない私は、今度は自分自身の手で口を塞いでいる。
 見かねた入来ちゃんが、笑みを含みながら話を続けてくれた。

「私が振られた瞬間ね、余韻もないままナオちゃんの心配をし始めたの。その切り替えの早さにも思わず笑っちゃって、ついナオちゃんを探してきてって言っちゃった」

「私のせいだね。私が余計な行動をしなければ……」

「違うの、それは逆にありがたかった。諦めつきやすかったし、戸部君の好きな人がナオちゃんだったら、私も嬉しいし」

「でも……」

 流れのままに、あの花火大会のこと。そして、ユウキに彼女が出来たこと。
 私の機能を停止させている元凶を、全て話した。
 すっかりのぼせるくらいに入来ちゃんは聞き入ってくれて、裸のまま抱きしめてくれた。
 もう何分も浸かっているこの大浴場で、友達の温もりを感じられるなんて。
 入来ちゃんが『辛かったね』と一言こぼすと、少しずつ力が抜けて、気が楽になった。
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