76 / 173
# 夏
スターマイン⑪
しおりを挟む
「ナオちゃん、どこ行くの?」
え……?
その温度は、感じたことがある温度だった。
いつもその手が、私の足裏を包んでいる。
暗い道の中、微かに見えるのは、訝しげな目でこちらを見つめる戸部君の姿。
「戸部君……」
「急に消えちゃったから心配したよ」
「ごめん、トイレに行こうとしたら道に迷っちゃって」
「そうなんだ、それにしても迷い過ぎだよ。そっち駅だよ?」
「あ、ごめんね。でももう終わるし、このまま帰ろうかな」
心を抉るような鈍い痛み、それが徐々に浸透してきて、戸部君と会話するのも鬱陶しく感じてくる。
ミッションは失敗、心には深い傷が。
入来ちゃんには、本当に申し訳なく思う。
でも、今は自分の精神状態が極限まで落ち込んでいる。
ユウキに真相を迫れないのなら、もういっそ帰って眠りたい。
「じゃあ、俺も帰ろうかな」
「え?」
「……って言ったらどうする?」
戸部君が冷めた顔で、そう問いかけてきた。
戸部君も帰ったら、入来ちゃんが一人きりになっちゃう。
そんなこと、できるわけがない。
「入来ちゃんが心配になるでしょ。戸部君は居てあげなよ」
「さっきまでナオちゃんがそうだったんだぞ!!」
突然声を張り上げた戸部君は、今まで見たことのない血相の変え方をしている。
花火の音で大声はかき消されたけど、私の耳には淀みなく届いた。
え……?
その温度は、感じたことがある温度だった。
いつもその手が、私の足裏を包んでいる。
暗い道の中、微かに見えるのは、訝しげな目でこちらを見つめる戸部君の姿。
「戸部君……」
「急に消えちゃったから心配したよ」
「ごめん、トイレに行こうとしたら道に迷っちゃって」
「そうなんだ、それにしても迷い過ぎだよ。そっち駅だよ?」
「あ、ごめんね。でももう終わるし、このまま帰ろうかな」
心を抉るような鈍い痛み、それが徐々に浸透してきて、戸部君と会話するのも鬱陶しく感じてくる。
ミッションは失敗、心には深い傷が。
入来ちゃんには、本当に申し訳なく思う。
でも、今は自分の精神状態が極限まで落ち込んでいる。
ユウキに真相を迫れないのなら、もういっそ帰って眠りたい。
「じゃあ、俺も帰ろうかな」
「え?」
「……って言ったらどうする?」
戸部君が冷めた顔で、そう問いかけてきた。
戸部君も帰ったら、入来ちゃんが一人きりになっちゃう。
そんなこと、できるわけがない。
「入来ちゃんが心配になるでしょ。戸部君は居てあげなよ」
「さっきまでナオちゃんがそうだったんだぞ!!」
突然声を張り上げた戸部君は、今まで見たことのない血相の変え方をしている。
花火の音で大声はかき消されたけど、私の耳には淀みなく届いた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる