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# 夏

スターマイン⑪

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「ナオちゃん、どこ行くの?」

 え……?

 その温度は、感じたことがある温度だった。
 いつもその手が、私の足裏を包んでいる。
 暗い道の中、微かに見えるのは、訝しげな目でこちらを見つめる戸部君の姿。

「戸部君……」

「急に消えちゃったから心配したよ」

「ごめん、トイレに行こうとしたら道に迷っちゃって」

「そうなんだ、それにしても迷い過ぎだよ。そっち駅だよ?」

「あ、ごめんね。でももう終わるし、このまま帰ろうかな」

 心を抉るような鈍い痛み、それが徐々に浸透してきて、戸部君と会話するのも鬱陶しく感じてくる。
 ミッションは失敗、心には深い傷が。
 入来ちゃんには、本当に申し訳なく思う。
 でも、今は自分の精神状態が極限まで落ち込んでいる。
 ユウキに真相を迫れないのなら、もういっそ帰って眠りたい。

「じゃあ、俺も帰ろうかな」

「え?」

「……って言ったらどうする?」

 戸部君が冷めた顔で、そう問いかけてきた。
 戸部君も帰ったら、入来ちゃんが一人きりになっちゃう。
 そんなこと、できるわけがない。

「入来ちゃんが心配になるでしょ。戸部君は居てあげなよ」

「さっきまでナオちゃんがそうだったんだぞ!!」

 突然声を張り上げた戸部君は、今まで見たことのない血相の変え方をしている。
 花火の音で大声はかき消されたけど、私の耳には淀みなく届いた。
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