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# 春
予期せぬエラー⑤
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さっきまで怒っていたように見えた入来ちゃんの表情は、心なしか優しそうだ。
慰めようとしてくれるのが、表情だけで伝わる。
「私の話って、何を話したの?」
「ナオちゃんのこと、勿体ないって戸部君が言ってたの」
勿体ないって……戸部君の中の自分の評価が、それだけでは予想もつかない。
声を発することができず、頷きながら続きを促した。
「戸部君はね、一番最初にナオちゃんを見た時、すごい尊敬したんだって」
「尊敬? どうして?」
私は戸部君の第一印象最悪だったはずだけど、何があったっけ。
たった二か月前のことが、すぐには思い出せない。
「ナオちゃんがね、一番前の席に座っていたから」
「何それ、そんな理由?」
あまりにくだらない答えに、思わず気抜けしてしまう。
確かに入学式の日、クラスの全員が後ろの方に座っていた中、私だけ堂々と前の席を陣取った。
その後に戸部君が来て、私の隣に座ってきたはず。
「戸部君笑いながら言ってたよ。あんな度胸のある人初めて見たかもって。でも、あの時の自信が、最近なくなっている気がするとも言ってた」
自信がなくなっていることに関して、否定する気は全くない。
現実的にみんなより技術が劣っていると感じていたし、それを口に出すことによって同情を誘っていたのも事実。
それをストレートに言われた悔しさから、思わず喧嘩腰になってしまった。
慰めようとしてくれるのが、表情だけで伝わる。
「私の話って、何を話したの?」
「ナオちゃんのこと、勿体ないって戸部君が言ってたの」
勿体ないって……戸部君の中の自分の評価が、それだけでは予想もつかない。
声を発することができず、頷きながら続きを促した。
「戸部君はね、一番最初にナオちゃんを見た時、すごい尊敬したんだって」
「尊敬? どうして?」
私は戸部君の第一印象最悪だったはずだけど、何があったっけ。
たった二か月前のことが、すぐには思い出せない。
「ナオちゃんがね、一番前の席に座っていたから」
「何それ、そんな理由?」
あまりにくだらない答えに、思わず気抜けしてしまう。
確かに入学式の日、クラスの全員が後ろの方に座っていた中、私だけ堂々と前の席を陣取った。
その後に戸部君が来て、私の隣に座ってきたはず。
「戸部君笑いながら言ってたよ。あんな度胸のある人初めて見たかもって。でも、あの時の自信が、最近なくなっている気がするとも言ってた」
自信がなくなっていることに関して、否定する気は全くない。
現実的にみんなより技術が劣っていると感じていたし、それを口に出すことによって同情を誘っていたのも事実。
それをストレートに言われた悔しさから、思わず喧嘩腰になってしまった。
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