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# 春

新生活③

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「リラクセーションだったら、ボディケアもあるのに、何でリフレクソロジストなの? 足専門にした理由は?」

 私が考えていた、どこに実家があるのという質問より、百倍マシだった。
 下手くそな聞き役になっている自分が、恥ずかしく感じる。

「リフレクソロジストにしたのは、反射区に興味があったから。だって足裏を刺激したらね、その反射している部位の疲れが和らぐかもしれないんだよ? これって凄いことだよ」

 入来ちゃんは目をキラキラさせながら、リフレクソロジーへの愛を語っている。
 こんなに饒舌な入来ちゃんは、二度と見られないかもしれない。
 その勢いは、まだまだ止まることがなさそうだ。

「冷静に考えて、足裏に全身が反映されているって凄くない? プロになったらね、父の肝臓の反射区を刺激してあげるんだ。お父さん、毎日お酒飲んでるから、きっと反応あると思うんだよね」

 さすがの戸部君も、合いの手を入れるタイミングを逃しているみたいだ。
 入来ちゃんも、ひと通り話をして喉が渇いたのだろう。 
 話の途中でグラスを持った瞬間を、私は見逃さなかった。

「じゃ、じゃあ入来ちゃんは、将来実家を継ぐんだね」

 入来ちゃんはグラスに入っていた野菜ジュースを、一気にストローで吸い込むと、静かにコクっと頷いた。


「一応、その予定だけど。でもまだまだ先の話かな」
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