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三章 諦めてくれない?
キャンパスライフ②
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「じゃあ、今日は自己紹介だけしちゃいましょう!」
ついに来たか、私がこの世で最も嫌いな時間。
自己紹介なんて、目立ちたがり屋だけがすればいいのに。
私みたいな根暗にとって、こんなの罰ゲームでしかない。
案の定、大学生になって髪色明るくしましたってやつだけが、ウケ狙いに走る。周りに合わせる形で笑ってみるけど、内心では死ぬほどつまらないと思っていた。
「じゃあ次は、そこの男の子! 前に出て自己紹介をお願いします!」
私の一つ前に座っている男の子が指名される。その子は余分な動きを一切見せずに、堂々と教壇の上に立った。
次は私の番だから、あの子が永遠に話してくれたらいいのになと考えてしまう。
そんなことは、もちろんあり得ないけど。
「初めまして、梅野 風太(うめの ふうた)って言います。英語得意じゃないですけど、まあよろしくお願いします」
緊張感が押し寄せてくるせいで、キリキリと胃が痛くなる。
痛みを紛らわすかのように、ぼんやりと壇上のあの子を眺めていると、どこか既視感があるように見えた。
いや、今はそんなこと考えるんじゃなくて、意識を無にしないと。
そうしないと、気絶してしまいそうだ。
「あらあら。じゃあ梅野君、先生がみっちり教えますからね」
「それは……ノーサンキューで」
皆の前でゆるりと展開された掛け合いで、クラスは笑いに包まれた。
誰かが狙って言ったギャグとかではなく、何の力も入っていない会話だったからか、全員が自然体で笑っていた。
先生が「面白いわね」と言ったのも聞こえたし、この男の子を気に入ったみたいだ。
こんな温まった空気の中、いよいよ私の番が来る。
とてつもなくやりにくくなったこの空気から、逃げ出したい。何でよりによって、ウケた人の後に自己紹介をしなきゃいけないのか。
順番通り私が指名されると、自信なさげに壇上へ上がった。
「名前は樺山 栞です。よろしくおねがいします」
前を向くなんて、不可能に近い。
最低限のことだけ言って、席に座ろうとする。
皆の目は見れていないけど、皆の目線が怖かった。
一礼だけして、すぐに戻ろうとしたところで、先生が悪魔のようなことを言い出す。
「樺山さん待って! 先生もうちょっと何か聞きたいなぁ」
「……え?」
嘘でしょ? 確かにあまりにも短かったかもしれないけど、わざわざストップをかけるなんて。
どっからどう見ても、私があがり症なのを察することができるはずなのに。何のために、もう一声言う必要があるのか。
先生の無駄な正義感に、虫唾が走った。
「じゃあ……好きなものとか、何かある?」
「す、好きなものですか……」
視線は、私に集中している。即座に答えることなんて、当然できない。
いきなりそんなこと言われても……強いて言うなら読書だけど、そんなありきたりな回答で、この先生が満足するわけないし。
もし読書なんて言った日には、何の本が好きかとか聞いてきて、話を膨張させるに決まっている。
そこまで話す体力がない私は、他に何か好きなものがないか無心で考えていた。
私が好きなこと……興味のあること……。
あ、あるじゃん。
ついに来たか、私がこの世で最も嫌いな時間。
自己紹介なんて、目立ちたがり屋だけがすればいいのに。
私みたいな根暗にとって、こんなの罰ゲームでしかない。
案の定、大学生になって髪色明るくしましたってやつだけが、ウケ狙いに走る。周りに合わせる形で笑ってみるけど、内心では死ぬほどつまらないと思っていた。
「じゃあ次は、そこの男の子! 前に出て自己紹介をお願いします!」
私の一つ前に座っている男の子が指名される。その子は余分な動きを一切見せずに、堂々と教壇の上に立った。
次は私の番だから、あの子が永遠に話してくれたらいいのになと考えてしまう。
そんなことは、もちろんあり得ないけど。
「初めまして、梅野 風太(うめの ふうた)って言います。英語得意じゃないですけど、まあよろしくお願いします」
緊張感が押し寄せてくるせいで、キリキリと胃が痛くなる。
痛みを紛らわすかのように、ぼんやりと壇上のあの子を眺めていると、どこか既視感があるように見えた。
いや、今はそんなこと考えるんじゃなくて、意識を無にしないと。
そうしないと、気絶してしまいそうだ。
「あらあら。じゃあ梅野君、先生がみっちり教えますからね」
「それは……ノーサンキューで」
皆の前でゆるりと展開された掛け合いで、クラスは笑いに包まれた。
誰かが狙って言ったギャグとかではなく、何の力も入っていない会話だったからか、全員が自然体で笑っていた。
先生が「面白いわね」と言ったのも聞こえたし、この男の子を気に入ったみたいだ。
こんな温まった空気の中、いよいよ私の番が来る。
とてつもなくやりにくくなったこの空気から、逃げ出したい。何でよりによって、ウケた人の後に自己紹介をしなきゃいけないのか。
順番通り私が指名されると、自信なさげに壇上へ上がった。
「名前は樺山 栞です。よろしくおねがいします」
前を向くなんて、不可能に近い。
最低限のことだけ言って、席に座ろうとする。
皆の目は見れていないけど、皆の目線が怖かった。
一礼だけして、すぐに戻ろうとしたところで、先生が悪魔のようなことを言い出す。
「樺山さん待って! 先生もうちょっと何か聞きたいなぁ」
「……え?」
嘘でしょ? 確かにあまりにも短かったかもしれないけど、わざわざストップをかけるなんて。
どっからどう見ても、私があがり症なのを察することができるはずなのに。何のために、もう一声言う必要があるのか。
先生の無駄な正義感に、虫唾が走った。
「じゃあ……好きなものとか、何かある?」
「す、好きなものですか……」
視線は、私に集中している。即座に答えることなんて、当然できない。
いきなりそんなこと言われても……強いて言うなら読書だけど、そんなありきたりな回答で、この先生が満足するわけないし。
もし読書なんて言った日には、何の本が好きかとか聞いてきて、話を膨張させるに決まっている。
そこまで話す体力がない私は、他に何か好きなものがないか無心で考えていた。
私が好きなこと……興味のあること……。
あ、あるじゃん。
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