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広大な面積を誇るフェグレン王国には、貴族の子供たちが通う全寮制の学び舎フェグレン王立学園がある。全国から集う令息と令嬢たちは15才から3年間をここで共に過ごすのだ。

未来を託された私たちが、争わず団結して国を守って行けるように。
忠誠心と友愛の心を培いながら貴族としての勉学に励む。

私が入学した時ジュリアンとは既に婚約3年目に突入していた。同い年の幼馴染である私とジュリアンは家族ぐるみの付き合いの中でいつしか将来を誓いあっていた。

フェグレン王立学園では毎年、聖夜の舞踏会が開かれる。
正確には聖夜の二週間前に開かれて、帰省して新年を迎えて春に進級と同時に学園へと舞い戻ってくる。

ともかく、聖夜の舞踏会ではその年のベストカップルが発表される習わしだ。
ベストカップルに選ばれると翌年は学園の顔としての役割が与えられる。様々な行事で代表を務める他、お茶会を主催するなどのリーダーシップや、公の存在として二人一組で過ごす責任感を身を以て学ぶ。

本当の恋人同士に限らず、聖夜でダンスの相手をしていれば友達でも親戚でもいい。要は忠誠と友愛のレッスンだ。
来年度のない最上級生と教授が審査員。

私は昨年、栄誉あるベストカップル賞を受賞した。
相手は当然ながら婚約者のジュリアン。
入学当初から仲良しカップルと認知され続けていたので、ついに掴んだ念願のベストカップル賞だった。

「やったな、エレノア!俺たちベストカップル賞だ!」
「ジュリアン、やったわ!みんなでお祝いしましょう!」

帰省して両家揃っての年越しパーティーで私たちは盛大にお祝いされて、卒業後に結婚という話が決まった。

春。新年度。
クライヴ伯爵令息ジュリアンとウェリントン伯爵令嬢エレノア。
誇り高きフェグレン王立学園の顔としての最終学年が始まった。

最初はとてもよかった。
喜び、誇り、未来への期待、それに卒業後の結婚。
目に映る全てが輝いていた。

暗雲が立ち込めたのは初夏。

忙しくて顔を合わせる機会が減っているだけだと思っていた私にジュリアンは言った。

「実は好きな人ができた」
「え……?」

能天気と言われる私でもこれにはさすがに凍り付いた。
私が何も言えないのをいい事に、ジュリアンは大真面目に続ける。

「新入生のティナ・ハーフェンって子だ」
「な……っ」
「わかってると思うけど余計な事するなよ?」

余計な事?
婚約者がいて他の子と付き合うのは余計な事ではないとでも言うの?

「で、でも……私たち卒業したら──」
「エレノア、もう飽きたよ。君との婚約は破棄させてもらう」

その瞬間、私の視界から色が消え世界は灰色に染まった。
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