夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ

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それでも国を率いるのが国王の使命。
泣き言ばかりだろうと、王妃である私の義務というものは、やはりある。

母国では父が国王として国を統治し、弟が王太子として真っ当に生きている。
往復書簡はあっという間に嵩張り、方針は決まった。

この国が疲弊しきって、反乱が起こるのを待つ。それもいい。
でもそこまで国民を追い詰めるのは憚られるため、離婚と同時に援助を打ち切るか、援助を続ける代わりに属国になるか、王妃である私に政権を譲るかの3拓を迫った。

「外国人のくせに!この国を乗っ取ろうと言うのね!」

今回は愚かなマルベルに手を焼いた。
政治の話は全く通じないのだ。

その点、ゴドウィンは腐っても国王だった。
結婚で同盟国となった私の母国の国王から突き付けられた最後通牒の重みに、若干、目が覚めたらしい。

「フランチェスカ、すまなかった。なんとか考え直してもらえないだろうか」
「口では何とでも言えるでしょう。マルベルと酒に溺れる生活を改めてから出直してください」

私はゴドウィンに何の期待もしていなかった。
ところが、ゴドウィンは予想を超えて来た。

あれだけ粋がっていたというのに、マルベルと手を切ったのだ。
かなり揉めたというのは大臣から聞いた。ゴドウィンは私財からマルベルに多額の手切れ金を払い、なんとか片付いたらしい。

寵姫マルベルとの蜜月は1年にも満たなかった。
その短期間で宮廷を腐敗させたのだから、醜悪さは目を瞠るものがある。
そんなマルベルは、手切れ金を元手に娼館を開いたとだいぶ後になってから聞いた。

「フランチェスカ、俺を愛してくれとは言わない。俺は君に相応しくないだろう。だが、どうか、国民のために離婚だけは考え直してくれ」

ゴドウィンは私に頭を下げた。

「これからは君に国政を任せる。君の思うようにしてくれ」
「あなたにとっては、それが一番楽で、利益がありますものね」
「何を言われてもその通りだ。俺は国王失格だ。だからどうか、国民だけは守らせてくれ」

一度の浮気でゴドウィンという男の底は見切れていた。
国王としても、夫としても、ゴドウィンは無能だった。

「しばらく夢を見せてあげましょう。私が男児を産んで早々に王位を継がせても良し、弟が王位についたら攻め込ませても良し」

夫を愛する事はないとしても、私は王妃。
ただ二度と縛られはしない。私は国民を守るという義務を果たしながら、好きに生きる。

離宮での生活は素晴らしかったから。

やがて私が誰かと恋に落ちようとも、ゴドウィンは文句一つ言えないだろう。
私は国を揺るがしたりしない。
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みんなの感想(8件)

閑人
2025.02.25 閑人

これで終わりなのが寂しい。スピンオフでも続編でもいいので続きが読みたいです。

解除
ひゅふぁ
2024.12.09 ひゅふぁ

3話目でのゴドウィンの目覚めが、2話目までの狂乱っぷりからすると少し唐突に思いました。
急にまともなこと言い出した!と。
この長さ、短編だからこそ、すっきりと読めてよかったのですが、2話から3話目にかけて、王様などの感情の描写など、もっと長めに、中編ほどのボリュームで描かれていたら、さらに面白かったのかなと思いました。

解除
田中角栄
2023.11.13 田中角栄
ネタバレ含む
2023.11.15 希猫 ゆうみ

せっかくお読み頂いたのに御不快な思いをさせてしまい申し訳ありませんでした。
投稿を始めたばかりの作品は特に未熟です。
頂いたご意見は今後の創作の参考にさせていただきたいと思います。
御不快な思いをされた上、アドバイスしてくださり、ありがとうございました。

解除

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