夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ

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「フランチェスカ、君の時代は終わりだ」
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

ゴドウィンは私の悔しがる姿を見たかったらしく、やや腑に落ちない顔をしていた。

離宮に移り、久しぶりにゴドウィンのいない生活が始まる。
それは想像以上に居心地のいいものだった。

能力が低いくせに態度ばかり大きな、謂わば粋がった若い国王は、正直見ていて気持ちいいものではなかった。

夫の愛を失ったとしても傷つきはしなかった。
それも結局は、それほど愛していなかったからなのかもしれない。

「フランチェスカ陛下、お客様がお見えです」
「今度は誰かしら」

私が去り、王宮は無能なゴドウィンと我儘なマルベルに蹂躙され悲鳴をあげている。
毎日、大臣が私に助けを求めて訪れる。

「陛下を止められるのは王妃様しかおりませぬ」
「いえいえ、滅相もない。あの方に私の声など届きませんでしたよ?」
「お願いします、我々を見棄てないでください」
「私の気持ちがどうだとしても、陛下には関係ないでしょう」
「どうか御慈悲を……!」

見慣れた顔の大臣が気の毒になり、私は一度くらい手を打ってもいいように思えた。

3ヶ月ぶりに宮廷へ戻って見ると、まるで品の無い、統一感皆無の、手あたり次第に集め陳列した高級な調度品が目についた。

宮廷に仕える侍女たちは皆貴族だというのに、マルベルの奴隷のように働かされ、中には正気を失いかけている者もいた。

政治に手を付けるより、彼女たちを引き抜くのが先ね。

「フランチェスカ、横暴だぞ!宮廷から侍女を奪うなんて正気か!?」
「あなたの愛しいマルベルには、もっと相応しい召使がいましてよ」
「いいわ、ゴドウィン。あの人たち生意気だったもの。もっと素直な人を雇いましょうよ!」

マルベルが愚か者でよかった。

宮廷から引き揚げた侍女たちは、各々の希望を聞いた上で、私の離宮で働いてもらうなり実家に帰るなりしてもらった。

私が優雅な毎日を送る一方で、宮廷は乱れに乱れ、今では低俗な大臣たちが残り、ならず者を引き入れて酷い酒宴を連日続けているらしい。

「フランチェスカ陛下、衣装係の妹をこちらで働かせて下さい」
「フランチェスカ陛下、料理人が不憫でなりません。彼らは踊り子の奴隷で、寝ずに宴会の支度をしています」
「フランチェスカ陛下、あそこはもはや宮廷ではありません!」

泣き言ばかり。

こうなってくると、私は頼られているのか、寄りかかられているのかと理解に悩む。
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