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「え……?」
「今夜の主役は君じゃなくジュリエッタだ。それがそんなに不満か?」

ステファンが険しく私を睨みつけジュリエッタの肩を抱いている。

「僕が幼馴染に甘いと不貞腐れるのは勝手だが、やり方が汚すぎる!」
「……な、にを……!?」

意味がわからない。
私が責められている。私は無実なのに。

「何をしたかわかっているのか?ジュリエッタに嫉妬しすぎて、もうまともに考えられなくなっているんじゃないか?」
「ステファン……?」

確かに馬車の中で喧嘩をした。
些細な言い合いだ。

少しの嫉妬はあった。熱心に求婚してくれたステファンが、婚約してからは幼馴染のジュリエッタとの思い出ばかり語るのは小さな悩みの種だった。

でも、愛する人の幼馴染だから、愛そうと思った。
シュヴァリエ伯爵家の哀しみに敬意を表し、ジュリエッタを祝福するために来たのだ。

だからジュリエッタからの親友の証を喜んで受け入れた。
それが策略とは思いもよらずに。

「……」

息が、うまくできない。

「なんだ。僕を騙せると思っていたのか?」
「……」

騙していない。

「君は僕の大切な人たちを傷つけたんだぞ!!」
「……っ」

怒鳴られて身が竦んだ。

騙されたのはあなたよ。
私も騙され傷つけられている。
そう心が叫んでも声にならない。

「しかも、よりによって盗みだなんて……君に貴族を名乗る資格はない!」
「ち、がう……っ」

やっと声を絞り出す。

突き刺さる無数の視線に生きた心地がしないとしても、耐えて、耐え抜いて、ステファンにだけは理解してもらわなくてはならない。

「彼女がくれたの……っ、私は、盗んでないわ……!」
「嘘!見苦しいわよ、シルヴィ!」
「嘘じゃないわ……!」

「お黙り!!」

ジュリエッタとの怒鳴り合いになりかけたところでテレザが叫んだ。
葬儀の時以来、人前で涙を見せたことなどなかった気丈な貴婦人として名高い女傑のシュヴァリエ伯爵夫人テレザが、熱い涙を流しながら私を鋭く睨みつける。

「この子は私が認めたサミュエルの妻です。私の大切な指輪を他人にあげるどころか、触らせることさえ断じてありえません。あなた……よくも、私たちにこんな酷い仕打ちを……!!」
「追い出して!」

ジュリエッタが怒号を上げるとステファンが迅速に動いた。私の腕を乱暴に掴み強引に引き摺るようにして歩き始める。愛を囁いた婚約者としてではなく、汚い盗人として扱われていた。

「い、痛い……やめて……!」

ステファンは私を見もしない。
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