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宮廷裁判でソフィア王女との決着がつき、王女の取り巻きに関して私は興味を失っていた。
ニコラス王太子からも、昼食会で私と父を侮辱した貴族たちに関しては特に働きかけず相手からの謝罪を待てばいいと言われていたのもある。
「……レディ・ヘレネ……」
思えば私を突き動かしたのは、彼女かもしれない。
あの頃はもう理性など僅かしか残っておらず、全てに追い詰められ絶望していた。しかしヘレネがあの昼食会に私と父を招き、私を実質的に追放し、魔女と呼んだ。
言葉にできるようになったのは少し後だったが、あの時、命の危機を感じたのだ。
興味を失ったとはいえ、私はクローゼル侯爵令嬢ヘレネがソフィア王女の取り巻きであるという考えまでは捨てていない。
私は応接室から少し離れた位置で廊下の壁に身を寄せ待機することに決めた。
呼ばれていないということは、クローゼル侯爵か父が私を同席させないつもりなのだ。併し立場ある者同士の話が終われば呼ばれるかもしれないことを考えれば、待機するのは妥当に思われた。
それにこの位置なら立ち聞きを疑われはしない。
次はどんな汚名を被せられるかと邪推してしまうのは相手が相手なのだから仕方ない。私は自身の猜疑心を卑しいとは思わない。
既に赤い夕陽が辺り一帯を舐めるように染めてあげている。
晩餐に招き一夜の宿を提供するのでなければ、そう長い話にはならないはずだ。
果して私の予想は的中し、程なくして応接室の扉が開いた。
厳格と威厳を兼ね備えたクローゼル侯爵の姿を目にすれば畏怖の念を抱かざるを得ない。それでも宮廷裁判を経た私は以前の私よりずっと彼らのような存在に慣れていた。
彼方が私を視界に入れた頃合いで深く頭を垂れる。
クローゼル侯爵より早く令嬢ヘレネが駆け寄って来て私の手を握った。私の心は酷く冷めていた。
「本当にごめんなさい、ヒルデガルド」
ヘレネは涙声で言った。
「私は愚かでした。あなたの言い分を聞きもしないで勝手に決めつけ、酷い言葉をぶつけてしまった。あなたの言い分を、そしてビズマーク伯爵の釈明を聞かねばならなかったのに……それが私の務めであったはずなのに、ごめんなさい」
本心だろうか?
私の手を握る細い指は異様な力が込められていて尚、震えている。
少なくとも必死な様子を演じるのは上手い。
「あなたへの無礼をどうか許してちょうだい。私が愚かだったの。私は自分の立場を弁えずあなたをただ追い詰めた。そうするべきではなかった。私の務めを怠ってしまった」
同じような言葉を繰り返すヘレネの背後にクローゼル侯爵が歩み寄り、至近距離の為に私もそれなりの威圧感を覚える。
私は握りこまれた手をどうすることもできず、かといって無視などできないためクローゼル侯爵を戸惑いながらも見あげた。
そこには残酷な憤怒の表情があった。
次の瞬間、クローゼル侯爵は娘であるヘレネの頭を鷲掴みにした。
「!?」
明確な暴力に私は驚きを隠せない。
ヘレネを庇う暇もなく、ヘレネの悲鳴を聞き、頭を守る為に離され痛む手を揉み合わせ、唖然とその光景を眺めてしまった。
「お前は私に言われたことしか言えないのか。本心で詫びる気がないのか」
「いっ、痛い……お父様……っ」
「このお嬢さんは王妃とクレーフェが認めた聖い御方なんだぞ」
「私が間違っていました!ごめんなさい!ごめんなさい!!」
私は呆れと恐れを同時に感じ思わず後退りしてしまう。
ヘレネは私への謝罪に訪れたわけではなく、父親に同伴し私に言葉だけで詫びて反省の姿勢を見せただけだ。
乱暴に髪を掴まれるのは痛いだろう。
可哀相と思えない自分自身に驚きながら、やはり暴力はよくないと理性が働く。
「閣下、どうか御慈悲を」
私が懇願するとクローゼル侯爵は悔恨の表情を顕わに娘の頭を放り出した。
そして私に向かって跪く。
「!?」
驚く私の傍にヘレネも頽れた。
彼女自身は恐れと痛みに泣きじゃくっている。
「レディ・ヒルデガルド。誠に申し訳ありませんでした。私の娘が行ったこの度の無礼は全て私の責任であります。育て方を間違えました。あなたは娘を罰さず、罵りもせず、慈悲を与えようとしてくださる。それこそこの身を差し出しても贖えない慈悲の心であられましょう」
「……閣下、そのような立派なものではありません」
私も跪くしかなかった。
目線が合うとヘレネは一瞬だけ私を見て蹲った。私はその泣き濡れた目に謝罪も怒りも感じはしなかった。そこにあるのはただ、このつまらない伯爵令嬢に負けたのかという悔し涙に思えた。
父もクローゼル侯爵の傍らに跪き、頭を低くして語り掛ける。
「閣下、もう結構です。私共は特別ではありません。どうか頭をお上げください」
この場が収まりそうにないと割り切り私は祈りを捧げた。
もう人の手ではどうにもできない。
「神よ、どうかこの気高き御方の心に平安と休息をお与えください」
「……!」
クローゼル侯爵は小さく呻り沈黙した。
私は目を開けた。私を見つめるクローゼル侯爵の表情は、威厳ある侯爵というより誰かの父親の顔だった。
ヘレネには酷い目に遇わされたが、クローゼル侯爵までもが同じように悪辣な人格を持っているわけではないようだ。僅かながらも心と心が触れた感触はあった。
併し、怒りに任せヘレネに暴力をふるうのかもしれない。
「レディ・ヒルデガルド。此れより先、我がクローゼル侯爵家はあなたに愛と敬意を忘れはしないと誓います」
「閣下、恐れ多いことです」
私は次第に気づき始めていた。
クローゼル侯爵が跪いている相手は私個人ではなく、与えられた神の娘の名や、私を弁護したニコラス王太子、謝罪した国王。私を通して為政者の影響力を恐れているのだ。
私の心の傷はとうに瘡蓋で塞がり、前より強い皮膚で覆われている。
此れがクローゼル侯爵の誠意であることには違いないと弁えるのが筋だろう。
クローゼル侯爵だけではない。
これから先、ハルトルシア王国の貴族たちは私を通して王家と教会を見る。
これは権力でも権威でもない。
責任だ。
王家が証明した潔白を、私が損なってはならない。
そしてそれは実現できるものだ。
「閣下、もう充分です。お気持ちは痛い程わかりました。ありがとうございます。私共へ向けて下さる敬愛をどうか王国と民へ向けてください」
父が言葉を重ねる。
やがて納得したらしいクローゼル侯爵は微かに安堵の表情を浮かべると、親しい友人にそうするように父の体に触れた。
「ありがとう、ビズマーク伯爵」
こうしてクローゼル侯爵家からの謝罪は幕を閉じた。
併し事件は終わらなかった。見送りに出た私と父だったが、馬車に乗る間際にヘレネが思い詰めた様子でふり返り私に叫んだのだ。
「私を呪わないで!」
「!?」
もう何を言われても驚かない気がしていたが、私はしっかり驚愕し呆気にとられた。
次の瞬間にはクローゼル侯爵がヘレネの頬を激しく打っていた。ヘレネは勢いに任せて倒れ、鼻血を出した。そして号泣した。
「閣下!」
私と父は同時に声を上げ、クローゼル侯爵に取り縋った。
「お嬢様は疲れていらっしゃるのです!御慈悲を!」
「肉を打たず、どうか祈り導いてください。お願いします。心からのお願いです。閣下!」
ヘレネを庇う気持ちより、高潔なクローゼル侯爵の激情に任せた暴力をやめさせたかった。
私はヘレネに受けた屈辱と絶望を忘れたわけではなかったのだと思い知った。
クローゼル侯爵は憤怒と無念を混ぜた悲痛な表情で奥歯を噛み締めながら声を洩らす。
「いいえ、レディ・ヒルデガルド。醜く歪んだ魂には痛みで教えるしかないのです」
「……」
今この場で言葉を尽くしても何も解決しない。
クローゼル侯爵家で積み重ねられた年月は私の手の届かない場所にあるのだ。
私はヘレネにハンカチを差し出した。
ヘレネは顔の下半分を押さえながら暫く迷った後で受け取る意思を示したが、父親によってその手を叩き落された。
私と父は夕暮れの中、クローゼル侯爵家の馬車を見送った。
疲労と困惑を互いの目に見止めながら中へ戻る。
「いつものように、謝罪金は領地内の教会へ寄付するか民の為に使うようお願いした」
「はい」
謙虚であるべきだという気持ちとは別に、方々から謝罪金を受け取っていてはその為の宮廷裁判だったと邪念を抱かれてしまう恐れがあった。
現実的に見て既に王家と教会から絶大な庇護を受けている状態になってしまっている。
身に余る畏怖や不名誉な猜疑を全て封じ込めるのは難しいだろう。
それでも、神は見ていると自らを律し清く正しく在れるよう努めるだけだ。
「お父様」
呼び掛けると、父は穏やかな眼差しを此方に向けた。
「王家から頂戴した賠償金の一部か大部分を使って救護院のような施設を建てたいと思うのですが、必要な知識を教えて頂けますか?」
娘が物品を強請るのではない。
私は宮廷裁判を経て与えられた神の娘の名に於いて、父ビズマーク伯爵に交渉している。
父も私の意識の変化を敏感に感じ取っているのだろうか。
寂しいような、嬉しいような、それでいて何処か他人行儀な礼節を滲ませた微笑みで何度も頷いて言った。
「お前の話を聞かせておくれ、ヒルデガルド。力を尽くそう」
ニコラス王太子からも、昼食会で私と父を侮辱した貴族たちに関しては特に働きかけず相手からの謝罪を待てばいいと言われていたのもある。
「……レディ・ヘレネ……」
思えば私を突き動かしたのは、彼女かもしれない。
あの頃はもう理性など僅かしか残っておらず、全てに追い詰められ絶望していた。しかしヘレネがあの昼食会に私と父を招き、私を実質的に追放し、魔女と呼んだ。
言葉にできるようになったのは少し後だったが、あの時、命の危機を感じたのだ。
興味を失ったとはいえ、私はクローゼル侯爵令嬢ヘレネがソフィア王女の取り巻きであるという考えまでは捨てていない。
私は応接室から少し離れた位置で廊下の壁に身を寄せ待機することに決めた。
呼ばれていないということは、クローゼル侯爵か父が私を同席させないつもりなのだ。併し立場ある者同士の話が終われば呼ばれるかもしれないことを考えれば、待機するのは妥当に思われた。
それにこの位置なら立ち聞きを疑われはしない。
次はどんな汚名を被せられるかと邪推してしまうのは相手が相手なのだから仕方ない。私は自身の猜疑心を卑しいとは思わない。
既に赤い夕陽が辺り一帯を舐めるように染めてあげている。
晩餐に招き一夜の宿を提供するのでなければ、そう長い話にはならないはずだ。
果して私の予想は的中し、程なくして応接室の扉が開いた。
厳格と威厳を兼ね備えたクローゼル侯爵の姿を目にすれば畏怖の念を抱かざるを得ない。それでも宮廷裁判を経た私は以前の私よりずっと彼らのような存在に慣れていた。
彼方が私を視界に入れた頃合いで深く頭を垂れる。
クローゼル侯爵より早く令嬢ヘレネが駆け寄って来て私の手を握った。私の心は酷く冷めていた。
「本当にごめんなさい、ヒルデガルド」
ヘレネは涙声で言った。
「私は愚かでした。あなたの言い分を聞きもしないで勝手に決めつけ、酷い言葉をぶつけてしまった。あなたの言い分を、そしてビズマーク伯爵の釈明を聞かねばならなかったのに……それが私の務めであったはずなのに、ごめんなさい」
本心だろうか?
私の手を握る細い指は異様な力が込められていて尚、震えている。
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「あなたへの無礼をどうか許してちょうだい。私が愚かだったの。私は自分の立場を弁えずあなたをただ追い詰めた。そうするべきではなかった。私の務めを怠ってしまった」
同じような言葉を繰り返すヘレネの背後にクローゼル侯爵が歩み寄り、至近距離の為に私もそれなりの威圧感を覚える。
私は握りこまれた手をどうすることもできず、かといって無視などできないためクローゼル侯爵を戸惑いながらも見あげた。
そこには残酷な憤怒の表情があった。
次の瞬間、クローゼル侯爵は娘であるヘレネの頭を鷲掴みにした。
「!?」
明確な暴力に私は驚きを隠せない。
ヘレネを庇う暇もなく、ヘレネの悲鳴を聞き、頭を守る為に離され痛む手を揉み合わせ、唖然とその光景を眺めてしまった。
「お前は私に言われたことしか言えないのか。本心で詫びる気がないのか」
「いっ、痛い……お父様……っ」
「このお嬢さんは王妃とクレーフェが認めた聖い御方なんだぞ」
「私が間違っていました!ごめんなさい!ごめんなさい!!」
私は呆れと恐れを同時に感じ思わず後退りしてしまう。
ヘレネは私への謝罪に訪れたわけではなく、父親に同伴し私に言葉だけで詫びて反省の姿勢を見せただけだ。
乱暴に髪を掴まれるのは痛いだろう。
可哀相と思えない自分自身に驚きながら、やはり暴力はよくないと理性が働く。
「閣下、どうか御慈悲を」
私が懇願するとクローゼル侯爵は悔恨の表情を顕わに娘の頭を放り出した。
そして私に向かって跪く。
「!?」
驚く私の傍にヘレネも頽れた。
彼女自身は恐れと痛みに泣きじゃくっている。
「レディ・ヒルデガルド。誠に申し訳ありませんでした。私の娘が行ったこの度の無礼は全て私の責任であります。育て方を間違えました。あなたは娘を罰さず、罵りもせず、慈悲を与えようとしてくださる。それこそこの身を差し出しても贖えない慈悲の心であられましょう」
「……閣下、そのような立派なものではありません」
私も跪くしかなかった。
目線が合うとヘレネは一瞬だけ私を見て蹲った。私はその泣き濡れた目に謝罪も怒りも感じはしなかった。そこにあるのはただ、このつまらない伯爵令嬢に負けたのかという悔し涙に思えた。
父もクローゼル侯爵の傍らに跪き、頭を低くして語り掛ける。
「閣下、もう結構です。私共は特別ではありません。どうか頭をお上げください」
この場が収まりそうにないと割り切り私は祈りを捧げた。
もう人の手ではどうにもできない。
「神よ、どうかこの気高き御方の心に平安と休息をお与えください」
「……!」
クローゼル侯爵は小さく呻り沈黙した。
私は目を開けた。私を見つめるクローゼル侯爵の表情は、威厳ある侯爵というより誰かの父親の顔だった。
ヘレネには酷い目に遇わされたが、クローゼル侯爵までもが同じように悪辣な人格を持っているわけではないようだ。僅かながらも心と心が触れた感触はあった。
併し、怒りに任せヘレネに暴力をふるうのかもしれない。
「レディ・ヒルデガルド。此れより先、我がクローゼル侯爵家はあなたに愛と敬意を忘れはしないと誓います」
「閣下、恐れ多いことです」
私は次第に気づき始めていた。
クローゼル侯爵が跪いている相手は私個人ではなく、与えられた神の娘の名や、私を弁護したニコラス王太子、謝罪した国王。私を通して為政者の影響力を恐れているのだ。
私の心の傷はとうに瘡蓋で塞がり、前より強い皮膚で覆われている。
此れがクローゼル侯爵の誠意であることには違いないと弁えるのが筋だろう。
クローゼル侯爵だけではない。
これから先、ハルトルシア王国の貴族たちは私を通して王家と教会を見る。
これは権力でも権威でもない。
責任だ。
王家が証明した潔白を、私が損なってはならない。
そしてそれは実現できるものだ。
「閣下、もう充分です。お気持ちは痛い程わかりました。ありがとうございます。私共へ向けて下さる敬愛をどうか王国と民へ向けてください」
父が言葉を重ねる。
やがて納得したらしいクローゼル侯爵は微かに安堵の表情を浮かべると、親しい友人にそうするように父の体に触れた。
「ありがとう、ビズマーク伯爵」
こうしてクローゼル侯爵家からの謝罪は幕を閉じた。
併し事件は終わらなかった。見送りに出た私と父だったが、馬車に乗る間際にヘレネが思い詰めた様子でふり返り私に叫んだのだ。
「私を呪わないで!」
「!?」
もう何を言われても驚かない気がしていたが、私はしっかり驚愕し呆気にとられた。
次の瞬間にはクローゼル侯爵がヘレネの頬を激しく打っていた。ヘレネは勢いに任せて倒れ、鼻血を出した。そして号泣した。
「閣下!」
私と父は同時に声を上げ、クローゼル侯爵に取り縋った。
「お嬢様は疲れていらっしゃるのです!御慈悲を!」
「肉を打たず、どうか祈り導いてください。お願いします。心からのお願いです。閣下!」
ヘレネを庇う気持ちより、高潔なクローゼル侯爵の激情に任せた暴力をやめさせたかった。
私はヘレネに受けた屈辱と絶望を忘れたわけではなかったのだと思い知った。
クローゼル侯爵は憤怒と無念を混ぜた悲痛な表情で奥歯を噛み締めながら声を洩らす。
「いいえ、レディ・ヒルデガルド。醜く歪んだ魂には痛みで教えるしかないのです」
「……」
今この場で言葉を尽くしても何も解決しない。
クローゼル侯爵家で積み重ねられた年月は私の手の届かない場所にあるのだ。
私はヘレネにハンカチを差し出した。
ヘレネは顔の下半分を押さえながら暫く迷った後で受け取る意思を示したが、父親によってその手を叩き落された。
私と父は夕暮れの中、クローゼル侯爵家の馬車を見送った。
疲労と困惑を互いの目に見止めながら中へ戻る。
「いつものように、謝罪金は領地内の教会へ寄付するか民の為に使うようお願いした」
「はい」
謙虚であるべきだという気持ちとは別に、方々から謝罪金を受け取っていてはその為の宮廷裁判だったと邪念を抱かれてしまう恐れがあった。
現実的に見て既に王家と教会から絶大な庇護を受けている状態になってしまっている。
身に余る畏怖や不名誉な猜疑を全て封じ込めるのは難しいだろう。
それでも、神は見ていると自らを律し清く正しく在れるよう努めるだけだ。
「お父様」
呼び掛けると、父は穏やかな眼差しを此方に向けた。
「王家から頂戴した賠償金の一部か大部分を使って救護院のような施設を建てたいと思うのですが、必要な知識を教えて頂けますか?」
娘が物品を強請るのではない。
私は宮廷裁判を経て与えられた神の娘の名に於いて、父ビズマーク伯爵に交渉している。
父も私の意識の変化を敏感に感じ取っているのだろうか。
寂しいような、嬉しいような、それでいて何処か他人行儀な礼節を滲ませた微笑みで何度も頷いて言った。
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