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27(最終話)
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その日、首都に住まう双子は身分を問わず宮廷の一画にて保護された。万が一の場合に備えた措置であり、実際は衛兵がいるのでそこまでの危険はない。
アーノルド率いる分派の修道士たちが城内へ入ると共に、マテウスと父が彼らの馬たちを極めて穏便に保護した。
私と母と髭面の義弟ホッブス伯爵は謁見の間の分厚いカーテンの陰に隠れてその様子を見物することが許されていた。当然、衛兵に守られてである。
私はカーテンの陰で初めてクアーク侯爵とその令嬢グロリアーナと対面した。複雑な心境だったが、相手もまたそうであるとは限らない。クアーク侯爵は温厚な笑みを浮かべ無言のまま私たちに手を差し伸べ握手を交わした。
グロリアーナは私など気にも留めていない様子で、分厚いカーテンの隙間から一団の様子を固唾を飲んで凝視していた。
「かつて陛下は僕を神童と呼んでくださいました!そうです!僕こそが王国に神託を告げる預言者なのであります!」
独特な修道服に身を包んだ一団の先頭でかつて私と婚約していた男が叫んでいる。
狂気そのものが脅威だ。
「陛下!僕は神の声を聞いたのです!我々を陥れる悪魔の遣いを見分ける方法!それは、不完全な欠陥人間として動物の如く生まれてくる双子であります!双子は悪魔の遣いです!汚らわしい畜生共とまとめて蒸し焼きにしてやるべきです!」
母が私の手を烈しく握った。
私の心臓が恐ろしい程に烈しく脈打つ。
「蒸し焼きと申すか。その祭壇は既に整えてあると言うのか?」
国王陛下が狂った主張に対しまともに相手にしているかのように尋ねると、意気揚々と元神童は答えた。
「はい!既に全ての準備が整っております!」
沈黙が挟まり、国王陛下が短い手振りで合図する。
陰に控えていた異端審問官たちが躍り出た。武装した修道騎士と異端審問官たちは其々に鎖鎌や武器を使い、瞬く間に異端者の一団を捕えた。
「よし……!」
母が歓喜の叫びを噛み締める。
クアーク侯爵がホッブス伯爵の肩を激励するような手つきで叩いた。
クアーク侯爵令嬢グロリアーナは泣き笑いのような小さな声をあげていた。
私は大きく息を吸い込んだ。
そして吐いた。
これで全て終わったのだ。
その後、ブライトマン伯爵が異端者として投獄された男は実の息子ではないと苦し紛れの抵抗を見せたが、宮廷は相手にしなかったらしい。むしろ過去の経費や研究について厳正な審査が成され、結果、ブライトマン伯爵は研究所を追われると共に爵位を剥奪された。
私はもう関りのない人間だと思うことにした。
しかしある一点に於いてのみ、マテウスはそうではなかった。
「キャサリンが身篭った。フォーセットが父親になるんだ……!」
異端の修道士たちが移動に用いていた馬を保護したマテウスは、運命の出会いを果たし三頭を引き取った。キャサリンはその中の牝馬であり、マテウスの愛馬フォーセットと結ばれたのだ。
愛の不思議。神の神秘。
或いは全て神の気まぐれと悪戯なのかもしれない。
巡り合わせが一つでも違っていたら、出会わずに生まれなかった命がある。
しかし産まれ、愛され、生きていくのだ。
ただ私は与えられた幸せな人生を愛し、愛する人たちと共に生きていくだけである。
愛馬たちのロマンスに浮かれ喜ぶ夫マテウスの顔を笑顔で見上げながら、私はそっと自身の腹部に手を添えた。
愛する夫マテウスに伝えるべきことがある。
あなたを愛する人間がもう一人増える──と。或いは二人かもしれない。
アーノルド率いる分派の修道士たちが城内へ入ると共に、マテウスと父が彼らの馬たちを極めて穏便に保護した。
私と母と髭面の義弟ホッブス伯爵は謁見の間の分厚いカーテンの陰に隠れてその様子を見物することが許されていた。当然、衛兵に守られてである。
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グロリアーナは私など気にも留めていない様子で、分厚いカーテンの隙間から一団の様子を固唾を飲んで凝視していた。
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「陛下!僕は神の声を聞いたのです!我々を陥れる悪魔の遣いを見分ける方法!それは、不完全な欠陥人間として動物の如く生まれてくる双子であります!双子は悪魔の遣いです!汚らわしい畜生共とまとめて蒸し焼きにしてやるべきです!」
母が私の手を烈しく握った。
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「はい!既に全ての準備が整っております!」
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「よし……!」
母が歓喜の叫びを噛み締める。
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愛する夫マテウスに伝えるべきことがある。
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