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ワージントン伯爵が息子のロバートを勘当したというニュースは、ありふれたつまらない話題として緩やかに広まった。
神経質な人が今更感に辟易したくらいで、すぐ忘れ去られた。
私も、今やどうでもよくなっていた。
気にしないように努めている例の件、実の父親が私の幼馴染の養父になった事の方が、余程頭を悩ませる。
幸い、良識ある貴族社会において、私は好奇の目に晒されるどころか励ましを得ている。夫のグレッグは優秀な子爵で将来も約束され、私もその善き妻であるようにと努力している姿勢が認められている。
唯一、深刻であるとすれば、懐妊の兆しがない事くらいだ。
結婚一年目はさほど問題にならなかった。
けれどそのまま三年目に入り、ついに無視できなくなった。その分、父やその再婚相手と娘の事は無視できるようになっていた。
「グレッグ、ごめんなさい……っ」
医師の診断は残酷だった。
かつて私が昏睡状態に陥った事が、妊娠しにくい体質になってしまった原因ではないかと、そう結論付けられた。
「あなたがいる、それが私の幸せだ。まだできないと決まったわけじゃないよ」
「だけど……もし、できなかったら?あなたには跡継ぎが必要なのに……!」
ワイズ子爵としての務めが果たせない。
それがどれだけグレッグの立場を不利にしてしまうか、私は酷い罪悪感に苛まれた。
ところがグレッグはわけもなく言った。
「なに、元より甥の私が継ぐ爵位だ。また親族に委ねればいい」
「でも……」
「親族みんな関係は良好だ。大丈夫、将来は安泰だよ。あなたが笑顔でいてくれたら、それでいいんだ」
上辺だけの慰めではないと、じわじわと実感させられ、その愛情が深い分、私は辛くなった。申し訳なくて、情けなくて。
「あなたの母性が子供を欲するなら、医者を雇って、無理ない範囲で体調を整えるのもいいだろう。だけど、私や家の体面のために思い詰めないでほしい。あなたがいてくれる事、それが何より大切な事だから。わかるね?レーラ」
「グレッグ……」
私は医者を雇った。
病気というわけではないので何ら厳しい制約は課せられなかったけれど、気を遣った分、ただ健康度が増した。
「あなたは一人娘だし、元から多産ではない家系だから……」
遊びに来た母からズレた慰め方をされて、若干の諦めも過った。
そんな時、事件は起きた。
神経質な人が今更感に辟易したくらいで、すぐ忘れ去られた。
私も、今やどうでもよくなっていた。
気にしないように努めている例の件、実の父親が私の幼馴染の養父になった事の方が、余程頭を悩ませる。
幸い、良識ある貴族社会において、私は好奇の目に晒されるどころか励ましを得ている。夫のグレッグは優秀な子爵で将来も約束され、私もその善き妻であるようにと努力している姿勢が認められている。
唯一、深刻であるとすれば、懐妊の兆しがない事くらいだ。
結婚一年目はさほど問題にならなかった。
けれどそのまま三年目に入り、ついに無視できなくなった。その分、父やその再婚相手と娘の事は無視できるようになっていた。
「グレッグ、ごめんなさい……っ」
医師の診断は残酷だった。
かつて私が昏睡状態に陥った事が、妊娠しにくい体質になってしまった原因ではないかと、そう結論付けられた。
「あなたがいる、それが私の幸せだ。まだできないと決まったわけじゃないよ」
「だけど……もし、できなかったら?あなたには跡継ぎが必要なのに……!」
ワイズ子爵としての務めが果たせない。
それがどれだけグレッグの立場を不利にしてしまうか、私は酷い罪悪感に苛まれた。
ところがグレッグはわけもなく言った。
「なに、元より甥の私が継ぐ爵位だ。また親族に委ねればいい」
「でも……」
「親族みんな関係は良好だ。大丈夫、将来は安泰だよ。あなたが笑顔でいてくれたら、それでいいんだ」
上辺だけの慰めではないと、じわじわと実感させられ、その愛情が深い分、私は辛くなった。申し訳なくて、情けなくて。
「あなたの母性が子供を欲するなら、医者を雇って、無理ない範囲で体調を整えるのもいいだろう。だけど、私や家の体面のために思い詰めないでほしい。あなたがいてくれる事、それが何より大切な事だから。わかるね?レーラ」
「グレッグ……」
私は医者を雇った。
病気というわけではないので何ら厳しい制約は課せられなかったけれど、気を遣った分、ただ健康度が増した。
「あなたは一人娘だし、元から多産ではない家系だから……」
遊びに来た母からズレた慰め方をされて、若干の諦めも過った。
そんな時、事件は起きた。
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