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結婚してワイズ子爵夫人となった私は、晴れて父と決別した。

私は酷いかしら?
でも、父に殺意までは抱かなかった。優しくない?

母はのんびり離婚を進めるそうだ。
母の長兄ウェズレイ伯爵は、母と私への精神的苦痛に対する慰謝料を正式に父に請求するらしい。

そしてグレッグはウィンスレイド伯爵を後見人とし、私に付き纏う変質者を不敬罪で訴えた。もちろんロバートの事だ。
ワージントン伯爵家より名家とあって、ウィンスレイド伯爵家の名前の効力は絶大だった。

こうして私の黒い歴史は、綺麗に幕を閉じたかのように思えた。
この時は。

少し遡って、初夜の事。
少なからず私は緊張していた。

だって妻になるならそれは義務だし。求められないなら、それはそれで問題だから。

「レーラ……私の、可愛い奥さん……」

披露宴ですっかり疲れていた私を、グレッグは膝に乗せ、何度も甘く名前を呼びながら、髪から頬、肩、背中と優しく撫で続けた。

鼻先で頬を擽られ、いつもよりずっと熱く秘密めいたキスをしながら、私は今夜この人のものになるのだと確信させられる。

ところが。

「……!」

清々しい朝に、目を覚ます。

「!?」

隣で眠るグレッグも、安らかな寝息を立てている。

「???」

自分の体を見下ろしてみても、きちんとパジャマを着ている。自分の体に注意深く意識を向けても、取り立てて、不具合はない。

「……」

初夜、ならずだった。

「ん……おや……天使が、私のベッドにいるようだ……」

気怠そうな甘い吐息と共に、グレッグはそんな事を言って微笑みながら目覚める。
愕然と見下ろしている私と目が合うと、グレッグは私の頬を撫で、屈みこむように引き寄せて優しいキスをする。

「よく眠れた?」
「……ええ」
「よかった」
「……えっと、その……」
「ん?」

私は思い切って尋ねた。
結婚したのは、確かだから。

「妻の、義務を……果たさずに寝てしまって、ごめんなさい」
「……」

グレッグは一瞬口ごもる。
でも次の瞬間には、いつも以上に優しい微笑みで私の目を覗き込んでいた。

彼の手が、子供をあやすように髪を撫でる。

「ゆっくり絆を深めよう。私たちは、これからずっと夫婦なのだから」
「グレッグ……」
「昨夜は、二人とも疲れていたしね」

おどけたように笑い、グレッグはこの話を終わらせた。

私がグレッグと真の意味で夫婦として結ばれたのは、それから3ヶ月ほど経った頃。私はすっかり、自分の夫に夢中になっていた。
素晴らしい愛の絆に、私は感動して泣いてしまった。
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