裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……

希猫 ゆうみ

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舞踏会はそれなりによかった。
面白半分かもしれないとしても、結果的に7人から求婚があった。まだまだ私にも未来がありそうだと思う事はできた。でも、心から手放しには喜べない。

男は裏切るから。
どんな理由も正当化して、私を悪者にできる人たちだから。

失礼とも受け取れる対応をしたにも関わらず、7人のうち3人からはすぐ手紙が届いた。いずれにしても内容は、会いたいという事だ。

気が乗らない。

早く結婚して安心できる土台を築いてしまいたいと思ったけれど、結局、父から別の男の支配下に移るだけのような気がする。

そうなのだとしたら、このまま、父の罪悪感を利用して私の言いなりにして生きていってもいいかもしれない。

どうせ、愛を誓いあうような結婚はもうできないのだから。

それに愛を誓いあったとしても壊れる結婚もある。

「ごめんなさい、レーラ。あの人があなたにそんな酷い事を言ったなんて知らなかったの。私、本当に駄目な母親ね」

最近、母が実家と連絡をとりあったようで、離婚を仄めかしている。
母も伯爵家の生まれなので、醜聞を一つ増やす事になるけれど離婚したとしても帰る場所があり、生きていける。

なぜ突然そんな話になったかというと、舞踏会の最中、私が父に言った一言で、母は違和感を感じたらしかった。
それで喧嘩をしたのか協議をしたのか知る由もないけれど、母は心を決めたらしい、。母が父を見る目つきは、私が父を見るよりずっと冷たい。

そしてついに、まずは別居という事になった。
夫婦間で特別大きな事件があったわけではないからかもしれないけれど、すぐ離婚というのは難しいらしい。ただ、私を連れて帰ると。

「待ってくれ!私たちは皆等しくパトリシアに騙されたんだ!どうして私だけを責めるんだ!!」

父は、私と母を失う事が耐えられないようで、惨めに泣いていた。
そんな父を私と母は冷めた目で見つめ、けじめをつけた。

その時に私は、なぜか、それが正しいような気がして、ワイド子爵家に手紙を送った。
社交界では醜聞なんてすぐ広まる。きっと私が報せなくても、どこかから伝え聞くはずなのに。私は、手紙を書いていた。

「自分の娘に命を奪うような脅し方をするなんて、あなたは人ではありません」

母の心がどれだけ冷たいか、私にはよくわかる。
私の心も凍てついているから。

だから私は、父を言いなりにして結婚費用を出させるよりも、母の傍にいる道を選んだ。

ところがそれが意外な展開を迎えるなどという事は、この時は知る由もない。
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