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「なにをやってるの……!?」

私は戸口で悲鳴をあげた。

今日は私の17回目の誕生日。
そのパーティーで肝心な二人が見当たらないから探していた。

一人は、私の幼馴染。
ブルック伯爵令嬢のパトリシア。
たった一人の親友……のはずだった。

もう一人は、私の婚約者。
ワージントン伯爵令息のロバート。
初めての恋人で、運命の人……のはずだった。

「レーラ……!」
「これは……その……」

幼馴染と婚約者は、私の部屋で、抱きあってキスをしていた。

「……っ」

待って。
どういうこと?

二人とも、私を忘れてしまったの?

「……なんで!?」

体がバラバラに壊れてしまいそうで、私は自分で自分を抱きしめて震える。

おかしい。
そんなはずない。

パトリシアとロバートが私を裏切るはずなんてない。

だけど……

だけど、現実は残酷だった。
気まずそうに抱擁を解いた二人は、謝罪も弁解もなく、こう言った。

「レーラ。はっきり言おう。僕はパトリシアを愛してる」
「え……!?」
「君を通じて運命の人に出会えたんだ」
「な、に……!?」

「レーラ。ごめんなさい。ロバートを愛してるの」
「は……?」
「今日はきちんとあなたに打ち明けようって決めてたの」

目の前が真っ暗になった。
体から感覚がなくなって、一瞬で熱くなった頭が、急に冷めた。

「どういう事?」

か細い自分の声が、とても遠くから聞こえる。

「レーラ。もう決めたんだ」
「何を?」
「一度きりの人生だから、愛する人と結婚したい」
「私と結婚するんでしょう?」
「君とは結婚しない。パトリシアと結婚する」
「は?」
「君との婚約は破棄させてもらう」

返す言葉もない。
ロバートの決意は強い視線に現れている。

更にパトリシアが追い打ちをかけてくるのも、強気な顔を見れば察する事ができた。

「レーラ。恨まずに祝福してほしいの」
「……どうして?」
「私たち、あなたを誰よりも大切に思ってるわ。これがどんなに勇気のいる決断だったか、それを考えてみてほしいの」
「……は?」

私、お説教されてる?

「あなたも辛いと思うけれど、私たちも辛いのよ」
「待って。意味がわからないわ」
「私とロバートは愛しあっているわ。愛は素晴らしいものなの。だからあなたにも幸せになってほしい」
「……」

頭がついていかない。
パトリシアは真剣な顔で、意味の分からない事を言っている。

「あなたも愛する人と結ばれてほしいのよ。そのためには、誰かを恨んじゃダメ。自分から不幸にならないで」
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