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一章
1-6 逃走
しおりを挟む「あら?」
クレイティアは驚いた表情を見せる。
「ん?どうしたんだい?」
「ごめんなさい。オーガが倒されてしまったわ」
「へぇ?なかなか強いんだね」
「でも大丈夫よ。向こうは2人しか居ないみたい。私もちょっとだけ頑張るわ」
優しい笑みを浮かべるクレイティアはまるで聖女のようであった。
「俺らなかなか戦えてるな!」
嬉しそうにユーリスに駆け寄るリュウトは大型犬を思い浮かべる。
「そうだな」
ユーリスも緊張が解けたのか表情が和らいだ。
2人が感傷に浸っていると、正面の家の扉が開いた。
人が隠れてたのかと思ったが違った。
扉の隙間からこちらの様子を伺っているのはゴブリンと呼ばれる魔物であった。
こちらを怯えるように見つめる目は人間そのものであった。
2人もゴブリンの様子を伺っていると、
バタンッと他の家の扉が開き、子供のゴブリン達が走ってくる。
こちらを襲ってくるかと思ったが、3匹で追いかけっこを始めた。
2人は呆気に取られていると次々に扉が開き、ゴブリン達が出てきた。
村人の服を洗濯するゴブリン、商品を売るゴブリン、畑を耕すゴブリン、赤ちゃんを背負うゴブリン、井戸端会議をするゴブリン、、、
まるでゴブリンの村にでも入り込んだ様である。
『パペット・ワールド』
クレイティアのオリジナル魔術で、元々はテイマーの持つスキル『服従』を改良した魔術である。
一度に100体以上の魔物を操ることができ、それに加えて、全ての魔物をまるで人間の様に動かすことは至難の業である。
しかし、操ることができるのは下位の魔物のみに限定されるため、上位クラスの冒険者にとってはそこまで脅威にはならない。
ただ、人間の村でゴブリン達が生活する様子は不気味でしかない。
「こいつら一体どうしたんだ?」
「分からん。ただ誰かに操られてるな」
誰かが操っていることに気づいたユーリスは辺りを見渡す。
通常、魔術は術者を中心に発動するため、近くに術者が居ないか探したが全く気配がない。
「だめだ、誰もいない。仕方ないが一旦退くぞ」
リュウトは頷いた。
本当は『鎮魂』を終わらせたかったが、この数のゴブリンとどこに居るかも分からない術者を相手にするだけの実力はない。
2人が動き出そうとした時、先ほど近くで遊んでいた3匹の子供のゴブリン達がこちらに向かって走ってきた。
攻撃されると思い、身構えたがただ走ってくるだけである。
リュウトは一歩下がって避けようとするがそれよりも早く、1匹のゴブリンがリュウトに向かって飛び込んできた。
リュウトは引っ張られる様に剣を前に出してしまった。
グチュッと肉が刺さる感触が手に伝わる。
「え?」
リュウトには分からなかった。なぜ、ゴブリンが飛び込んだのか。なぜ、剣を突き出してしまったのか。
ドサッと音がして、重たくなった剣を手放したのに気づいた。
深々と刺さった剣からは緑色の血液が流れ、絶命していた。
「人殺シダ!」
「『リーナ』ガ殺サレタゾ!」
「アアッ!私ノカワイイ娘ガッ!」
ゴブリン達の声が上がる。
辺りの赤い目がこちらを睨んでいる。
「ち、違う!俺じゃない!こいつが勝手に!」
「おいっ!しっかりしろ!敵の術にハマってどうする!」
ユーリスによってリュウトは、はっとする。
「いいから逃げるぞ」
幸いにも西門はオーガによって壊されている。
誘われているようだが逃げ道は一つしかない。
2人は走り出した。
「逃ゲルゾ!」
「捕マエロ!」
「殺セ!処刑ダ!」
次々と、周りから怒号が響く。
向かってくるゴブリンはユーリスによって薙ぎ払われる。
そのまま2人は西門を抜け、森の奥へ誘われるかの様に逃げていく。
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