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第6章 冒険 -帝国編-
早くないですか(イース視点)
しおりを挟む「突然だが、残念な知らせがある!!」
朝の食堂で、用意された食事をいただいている最中にフォルティスさんが急に立ち上がって言った。
「どうかしたんですか?」
こちらのテーブルにいたクリスさんがフォルティスさんに問いかけた。
「シーマ達が出発して4~5日経った今、作り置きの料理が底をつきやがった」
「えっ、もう無いんですか?」
私も手伝ったから分かるけど、確か7日分くらいはあったはずなのにどうして...。
いくらなんでも早くないですか?
って言いたい...けど言えない…。
「俺も人のことは言えないが、みんな食い過ぎだ!!」
「「「「「「「...」」」」」」」
アイゼンの幻陽のメンバーでもあるオルテガさんやエテルナさん、こちらにいるクリスさんとノエルさん、そしてイルマさんとアルテさん。
みんながみんな心当たりがあるため、ひたすらに無言だ。
朝とは思えないような重い重い沈黙が食堂に流れる。
何となくだけど、誰かが料理を作らなきゃいけないっていう空気を感じる。
そして、この場合はシーマさんの料理を手伝っていた私にほぼほぼ限定されている。
しょうがないな...。
やるだけやってみるとしますか...。
クリスさんのためでもあるし...。
「私がちょっと作ってみましょうか?」
「おお~!! イース、やってくれるか!!」
「もちろん、シーマさんと同じモノを求められても困るんですけど、一応少しは手伝っていたので多少なりとも近いものは作れるかと思いますが...」
「そう言ってくれると助かるぜ!! 俺達も出来るだけ協力するからよ!!」
「それなら、フォルティスさん達はお肉類をたくさんお願いします。そして野菜類はクリスさんやイルマさん達でいろいろ集めてきて下さい」
「わかった。任せとけ!!」
「僕たちもイースばかりに負担はかけられないからね。頑張って集めるよ」
「私には薬草で鍛えた目利きがあるからね、鮮度のいいモノを見つけてあげるよ」
皆さんのこの言葉で朝食はお開きとなった...のだが、私にとってはこれからが正念場だ。
「ふぅ...」
軽く請け負っちゃったけど、これで良かったのかな...。私ごときがシーマさんの料理を再現することが出来るんだろうか。不安でしかない。
「イース、嫌な役回りをさせちゃってごめんね」
「クリスさん...」
「でも、イースが引き受けてくれて良かったよー。私達もあのアイゼンの幻陽に恩を売れるしね笑」
「ノエルさん...私に出来るでしょうか?」
「大丈夫。イースなら出来るよー!!笑」
ノエルさんの言葉はいつも通り、どこか軽くて重すぎない。それがかえって私を楽にさせてくれる。
「僕もそう思う...でも」
「でも?」
「無理にシーマくんの料理を再現しようとしなくていいんだよ?」
「えっ?!」
「だって僕はイースの手料理を食べられればそれだけで幸せなんだから...」
「!!」
「ふふっ、そういうことみたいだから、イースも頑張ってねー!! 私達は買い出しに行ってくるから!!」
そう言い残して2人は食堂を出ていった。
ズルい...。
クリスさんにあんな風に言われたら、嫌なことでもやる気が出ちゃう...。
またこんな風に言われたりしたいな...。
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