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第6章 冒険 -帝国編-
シェスターとの時間
しおりを挟む俺はシェスターの近くに陣取って、クラフトスキルで大きな浴槽を作り出した。
シェスターが足から入れる高さで、なおかつ座っても問題ないくらいのスペースを確保しようと思うと、それなりに魔力を使うのだが、シェスターの為だから四の五の言っていられないよな。
「ブルルル」
俺が何をしようとしてるのかわからないシェスターは不安そうな声を出している。
あぁ~。
もしかして、この中に閉じ込められるとでも思ってんのかな?
そんなわけないやん。
でも、それを伝えられない…。
皮肉なもんだよな。
ある程度、心は通じあってると思うのに、言葉を交わすことが出来ない。
でも、考えようによっては、だからこそより相手を知ろうと努力を重ねるのかもしれないな…。
もっとシェスターと触れ合う時間も作らななければならない。シェスターも大事な仲間なんだからな。
「よし、出来た‼️」
俺は早速、完成したばかりのシェスター風呂にお湯を張ってみることにした。
人間と違ってそこまでお湯を熱くする必要はないと思うので、魔道具を調整して人肌くらいの温度にしたお湯を浴槽に入れた。
「ブルルル…」
んー。
初めて見るものだからなのか、シェスターは警戒しているようだ…。
まぁ、しょうがないか。
「シェスター、俺が先に入ってみるから大丈夫だと思ったら入ってきて」
俺はシェスターにそう告げてから湯浴み着に着替え、浴槽の中へと入って腰を下ろした。
「ひゅー…」
俺にはちょっと温いけど、それでもやっぱり風呂はいい。
昨日の夜はいろいろと疲れたしな…。
チャポン
チャポン
気持ち良くて知らない間に目を閉じていたら、すぐ近くで水の音がした。
「!!」
目を開けるとシェスターが浴槽に前足を入れているのが見えた。
思わずビックリしてしまったが、すぐさまシェスターの足にお湯をそっとかけて温かくしてあげる。
「ブル、ブル!!」
シェスターも安心したのか、後ろ足も浴槽に入れてきた。
俺もどんどんお湯をかけていくのだが、いかんせん4本もある足に満遍なく温めてあげるのは、俺が両手を駆使しても至難の業だ。
「ブルッ!!」
「んっ?!」
シェスターが足を折り曲げて座り出した。
俺がお湯をかけ続けてるのを申し訳なく思ったのか、自分からお湯に浸かってくれたのだろうか。だとしたら気が利き過ぎてるぞ…。
「ブルル…」
今度は、座ってくれたことで近づいた首を撫でると、シェスターは目を細めて気持ち良さそうにしている。今にも眠ってしまいそうな感じだが、それはそれでいいのかもしれない………ってそんなわけないな。このまま寝られてしまった癒すどころか風邪引いちゃうよ。
でも、もう少しだけこのままでいてあげようかな。
シェスターのための時間だしな。
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