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第5章 冒険 -教国編-

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「シーマくん、どうだった?」


 俺たちがロビーに戻ってくるのを待ち構えてたように、ロビンから声をかけられた。


「今はまだクラリスを部屋に残してますが、おそらくリンダさんの病気は治ったかと思います」

「!!」

「クラリスの魔法のおかげですよ。聖女の底力を見た気がしますね。なぁセレナ?」

「えぇ。あのリンダさんを包み込んだ光は、とても神秘的で感動してしまいました」

「そうか...クラリスが...よかった...」


 俺とセレナの答えを聞いて、ロビンさんは喜びを噛みしめているようだった。
 
 長い間リンダさんが病気に苦しんでるのを一番近くで見てきたんだもんな。無理もない。


「本当によかったですね。ずっと2人で苦しんできたんですもんね...」

「いや、2人じゃないよ」

「えっ?!」

「3人だ」

「「…」」

「治せなかったって気を落としていた前回以来、クラリスも何年も苦しんできたみたいだからね。私達は同じ痛みを抱えてきたんだ。それこそ家族のようにね…」

「確かにそうですね。クラリスとお2人の間には確かな絆のようなものを感じます。今回のことでさらにそれが強くなったんじゃないですか?」

「そうだね。私達には子供がいない。クラリスには親がいない。そんな中でリンダの病気があったからこそ出会えたんだ。今回たまたまこういう結果になったから言う訳じゃないけど、私達は勝手に親のような気分でいた。クラリスもそう思っていてくれたら嬉しいとは思うよ」


 まぁ、確かに本音ではそうなんだろうな。
 結果がいいものでよかった。


「ロビンさん、それはクラリスに直接言ってあげて下さい。クラリスがとても喜ぶと思いますよ。また大泣きしちゃうでしょうけど…」

「ハハハ。セレナちゃん、そんなもの親としてドンッと受け止めるだけだよ!!」

「フフフ。そうしてあげて下さい」


 最近のセレナはどんどん大人になってきてる気がするな。落ち着きが出てきたというか、肝が据わってきたというか…。何でも受け止められるような包容力がある。
 まぁ冒険に出てからはいろいろあったからな…。

 んっ?
 それってほとんど俺のせいじゃね?

 セレナに聞いてみたいけど、答えが怖くて聞けないな苦笑

 まぁ、いいか。
 ちょっと話題を変えることにしよう。



「ロビンさん、また1つお願いがあるんですけどいいですか?」

「ん? 何だい?」

「リンダさんが治ったことを誰かに話すのは、俺たちがこの街を出てからにして下さい」

「何故だ? すぐにでも伝えたい人達がいるのに」

「クラリスがこの街に来たことがバレてしまうからです」

「!!」

「恐らくリンダさんが重い病気でなかなか治らないこともご存知の方が多いと思います。それが急に治ったとなればこの国では聖女の仕業と思うことでしょう」

「そうか、そういうことか...」

「クラリスのためなんです。分かっていただけますか?」

「あぁ、もちろんだ。クラリスはリンダを救ってくれた大恩人だからな」

「ありがとうございます」

「何を言ってるんだ? お礼を言わなければならないのはこっちだぞ笑」

「笑」


 うん。
 これで、めでたしめでたしかな...。

 あっ、
 いや、
 まだやらなければならないことがあった。
 魚醤だ。




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