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第5章 冒険 -教国編-
フィリアとクラリス
しおりを挟む「フィリア王女とクラリス様は以前からの知り合いとは聞いてましたが、本当に仲がいいんですね」
クリスさんがそれとなく聞いている。
さり気ないけど、このタイミングとしては実に良い質問だ。
「そうね。クラリスもエピリシアでは重要人物だからね。こちらに来た時は必ず会ってた。年齢が近いこともあっていろんなことを話しながら親しくなった感じよね?」
「本当にその通りです。私は教国絡みの行事が好きになれませんでしたが、フィリア王女との面会だけは楽しみにしてました」
「クラリスも大変よね。聖女様だから国内を転々と移動しなければならなかったでしょ?」
「そうですけど、余計なことに巻き込まれないようにしてたので、転々としてたほうが良かったと思います」
「あぁ…。婚約者問題よね。面倒臭いわよね、あれは。でも私はもうシーマさんと婚約するから関係なくなったけどさ」
「シーマさんとのことはともかく、エピリシアでもここ数日フィリアのことはかなり話題になっていたそうですよ。婚約破棄だけでもビックリなのに、前回の帰り道に襲われたと知ってさらにビックリしました。こうして今ここにいるのを見ると、無事だったんだなってホッとしてますけど」
「クラリスもいろんな話があったんじゃないの? 噂ではクラリスがとある縁談を断ったことが今回の聖女交代の引き金になったって聞いてるけど?」
「よくそんな話まで知ってますね。確かに枢機卿の息子さんとの縁談は断りました。どうやら、彼らは聖女を教皇家に取り込みたかったようです。それに失敗した彼らは私の代わりに枢機卿の娘エデナさんを次の聖女であると発表し、強引に聖女を交代させたのです」
「まったく酷い話よね。でも、強引に交代させたところでどうなのかしらね? 聖女としての役割は果たせないんじゃないの?」
「エルピス様からのお告げというのは教皇と本人にしか伝えられません。なので、教皇と誰かが手を組んで『お告げがあった』と言えばどうにでもなるのです。もちろん、その場合は聖女の杖の本来の力を引き出すことは出来ませんが…」
「まぁそうでしょうね。でも、彼らにとって肝心なのは聖女の肩書きなわけだから、そこはそんなに重要視してなかったってことなんでしょうね」
「その通りだとは思いますが、本物の杖がすり替えられたと知ったら、なりふり構わず取り戻しに来るかもしれませんね」
「そしたらこっちは早めにオルティアに戻って手出しをしにくくしてやるだけよ。まぁそんなわけで、これから私達はあなたを乗せてオルティアに戻ろうと思ってるけどそれでもいいのかしら?」
「私は助けていただいた身ですので、何も言うことはありません。皆様の意向に従います」
「クラリス、それは違うわ」
「えっ?!」
「私達が勝手にあなたを助けたのよ。だからあなたにはそれを断わる権利も、自由に行動する権利もあるの。出来れば一緒にいて欲しいけど、無理に私達と行動を共にする必要はないのよ」
「ううん、大丈夫。ここにいる人達と一緒にいたほうが楽しく過ごせる気がするの。だからお願いです、一緒に行動させて下さい」
「そう…わかったわ、クラリス。これからもよろしくね」
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