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第5章 冒険 -教国編-

レイジ

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「ウオオオォォォ!!!」


 レッドボアを蹴散らすようにして、群れの真ん中を何かが通り抜けてくる。

 ん?
 あれは人間だよな?

『そうだね、人間だね。でも様子がおかしいんだよねー』

 そう言われてみると確かにおかしい。
 なりふり構わず斬っている感じだ。
 馬車のほうには近づけたくないな。
 
『嫌な予感がする。シーマ、魔力を最大にしてちょうだい』


 俺はシータを信じて、ギリギリのところまで魔力を注ぎ込む。


『おぉー!! いい感じいい感じー。これなら何とかなるかな…』

 いやいや何とかしてくれよ。
 ここで死ぬ訳にはいかないんだ。


「邪魔だぁぁぁ!!!」


ガキーンッ!!


「何だとぉぉぉ!!!」


 迫り来る狂気の剣を、シータが受け止めた。
 スゲー。


キン!
キンッ!!


「シーマくん、早く離れろ!! そいつは『狂剣のレイジ』だ!!」


 クリスさんの声が聞こえたのいいが、残念ながらそれどころじゃない。受け止めるだけで精一杯で離れられる気がしない。


「お前面白いなぁ!! 魔剣…いや、違うな。もしかして『神の声』なのか?!」


 何だそれ?
 神の声って何だよ。
 何言ってんだこいつ。


キン!
キンッ!


「クッ!!」


 マズイな。
 かなり押されてる…。


キンキンッ!
キーーン!
 

 こうなったら、俺がどこまで耐えられるかだな。ひたすら我慢比べになるのか。
 みんなは大丈夫なのかな?
 レイジから目を離せないから状況が分からない。
 まぁ、エリシオンがいるから問題ないだろ?


「チィッ!! 気が付いたらもう魔物がいねぇじゃねぇか!! 」


 んっ?!

 レイジとやらの狂気じみた剣が急に鎮まった。
 どうやらみんなが魔物をすべて倒してくれたようだ。


「俺は斬るのが楽しみなのにお前と遊んでたら、お前の仲間に魔物を全部倒されちまった。もうつまんねぇから帰るわー」

「…」


 レイジは俺に背を向けて歩き出したが、何故かすぐに振り向いた。


「おい! お前の名前は?」

「シーマだ」

「シーマか…どこかで聞いたか? いや、分かんねーな」

「…」


 いったいどっちなんだよ。
 まぁ俺としては関わりたくないから、分かんないほうがありがたいけど。


「どっかでまた会ったら、続きをしようぜ!!」


 レイジはそう言った後、背を向けて立ち去っていった。
 今度は振り向かなそうだ苦笑


 続きか…。

 嫌だよ。

 絶対やりたくねー!!



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