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第4章 冒険 -王都編-
香りの誘惑
しおりを挟む王城を出た俺たちは、宿を探すため王都内を馬車で散策していた。
本当はアイゼンの幻陽の件でギルドに行かなければならないのだが、優先順位としては宿屋を探すほうが先だ。
アイゼンの幻陽に宿屋を紹介してもらってもいいのだが、それはそれで何か面倒臭いことになりそうなので止めている。
「分かってはいてもやっぱり寂しいわね」
「そうなんだよねー」
セレナとシェリルが話しているのは、やっぱりフィリア王女のことだろう。
俺も寂しいのだが、それを口にすると嫌な予感がするんだよな苦笑
「またすぐに会えるよ。俺たちをソニア王妃から守ってくれたお礼をちゃんと言いたいしな」
「そう。それもよ」
「だよねー」
「?!」
みんなでフィリア王女のことを考えていたら、急に空気が変わったような気がして、御者の俺は馬車を止めた。
「シーマ、何かあったの?」
「あぁ…。何だか急に空気が変わったような気がしてな」
「そうなの? ボクは何も感じないけど」
うーん…。
確かにちょっと分かりづらいけどなー。
空気というよりは匂いかも。
「これは…匂いだな。薬草か何かだろうけど…。どうやらあの店からのようだけど入ってみてもいいか?」
「別に構わないわよ。シーマが気になるなら行ってみようよ」
セレナの後押しもあって、俺たちはその店に入ってみることにした。
ちょっと古ぼけた外観が何ともいい味を出しているこの店は看板の通りなら『ヒーラ』というらしい。
早速扉を開くと店内の香りが一斉に飛びかかってきた。薬草というよりは俺的にはアロマだな。うん。いい香りだ。
「おや? 珍しくお客さんが来たようだね。いらっしゃい。何かこの店に用かい?」
店内にいたおばあさんに声をかけられた。その口ぶりからするとお客さんがあまり来ない店なのかなー。
「この店から出てる匂いが気になりましてね。王都にも初めて来たので何も分からないんですけど、ここは何の店なんですか?」
「ほぉー。この香りに気付くとはなかなかだね。ウチは薬草などを調合してるだけの店だよ。あんた達は冒険者だろ? ポーションの類いは今日は全部売れちゃって無いよ」
スゲーな。
ポーション売り切るくらいなら結構な腕を持ってるのかな。
それにしても薬草だけではこんな感じにはならないはずだ。ちょっと気になったので鑑定を使ってみた。
「なるほど。薬草と花を調合するとこんな香りが出るんですね。気分が落ち着くし、それ以外にもいろんな用途に使えるといいですね」
「ん?! あんた鑑定持ちかい? ますます珍しいね。そうかい、気分が落ち着くかい。それならどうやら成功らしい」
「ご自分では感じられないんですか?」
「ずっと似たようなことをやってると鼻が利かなくなってきちゃうんだよ。今までの経験を頼りに作ってるようなもんだよ」
「どうしてそうまでしてこの作業をしてるんですか?」
「薬草の可能性を広げたくてね。厳密にはいろんな種類があることがわかってからは余計にね」
可能性かー。
そういえば、俺も薬草使って変なもの作っちゃったな。
すっかり忘れてたわ。
さすがに会ったばかりのおばあさんにはそんなこと言えないよな苦笑
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