120 / 413
第4章 冒険 -王都編-
足止め
しおりを挟む翌日。
この日から、フィリア王女とアルテさんは変装するようになった。
元の素材が良いからなんだろうけど、フィリア王女は冒険者として、アルテさんは商人として、それぞれ2人とも全く違和感を感じないくらい良く似合っていた。
ただ、その日は朝から出発したはいいものの、だんだん風が強くなってきたので山の麓の岩陰の目立たない場所へ馬車を停めた。
「シーマさん、あまり急がなくてもいいので安全を優先して下さい」
「その通りですな。人数が少ないし、無理も良くないですからな」
フィリア王女もアルテさんも状況を理解してくれる人でよかった。横暴な人だったら無理してでも行けってなるもんな。
正直なところ、馬のシェスターも毎日走らせてるので休ませたかったのでちょうどいいといえばちょうどいい。
「すみません。ここはフィリア王女様の安全を優先して無理には進まないことにします」
「わかったわ。それでいいのよ」
「ありがとうございます。ただ、周りの状況が分からないので俺とセレナで様子を見てきます。
シェリル、バリアと魔道具で馬車ごとフィリア王女様達を守ってくれ」
「大丈夫。こっちはボクに任せて!」
俺とセレナは早速馬車を降りて、サーチを使いながら辺りを確認しながら進んでいった。
サーチに引っかかるものはないが、風はどんどんと強くなっている気がする。そんなことを思った矢先にセレナから声がかかった。
「ねぇ、シーマ」
「どうしたセレナ? 何かあったか?」
「ううん、そうじゃないの。私の思い過ごしだといいんだけど一応聞いて」
「何だい?」
「コスタを襲ったスタンピード。あの時も前の日はこんな感じで風が強かったの」
「本当か? 俺は宿にいたから気にしてなかったけど…」
「うん。でも、今回もそうとは限らないわ。私の思い過ごしかもしれないし…」
「そうか…。この事はフィリア王女とアルテさんに相談するしかないな。俺たちがどう立ち振る舞えばいいのかも確認しておいたほうがいい」
「そうね。何かあってからでは遅いかもしれないしね」
俺とセレナは急いで馬車へと戻り、みんなを集めてスタンピードの可能性を伝えた。
「そんな…」
「まさか…」
フィリア王女もアルテさんも驚いていたが、問題なのはこれからどうするかだ。
「あくまで可能性に過ぎませんから、何も起きないかもしれませんが、俺としては最低限の準備くらいは必要かと思ってます」
「それもそうね。具体的にはどうするつもり?」
「わかりません」
「え?! 何よそれ。ふざけてる場合じゃないのよ!」
俺の答えにフィリア王女が怒った。
しょうがないじゃん。わかんないんだもん…。
「ならばフィリア王女様にお聞きしますが、もしスタンピードが起きた場合、俺たちはどう動けばよろしいですか?
王女様を守ることを最優先にするならばこの場所から動くつもりはありませんが、スタンピードを止めることを目的とするなら王女様達をどこかの街に避難させなければなりません。
王女様を守るか、国民を守るかどちらかなんですよ」
「それなら簡単なことよ。あなた達は国民を守って下さい」
「姫様!! それでは…」
アルテさんが戸惑うのは当然だ。
にしても、このフィリア王女…。
何の迷いもなかったな。案外器が大きいのかもしれない。
ただの食いしん坊じゃないみたいだ笑
「アルテ。私は国民があってこその王女なのよ。見捨てることなんて出来ないわ。
私そのものには何の力もないけど、シーマさん達がいてくれる。その時が来たら、私達のことはいいから、あなた達が国民の力になってあげて下さい」
「姫様…」
「わかりました。その時はそのように動くようにします」
それでは準備を進めますか。
11
お気に入りに追加
296
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

今日も隠して生きてます。~モフ耳最強なんて、誰が言った?!~
行枝ローザ
ファンタジー
世界でただ一人の『職業』の男が、世界でただ一人の『異質』な赤ん坊と会った。それが、旅の始まり。
世界でただ一人になった『魔素毒の森の管理人』シロン。
闇夜の森で、不思議な赤ん坊を拾った。猫の耳と鳥の羽と角を持つ、魔力のまったくない獣人の女児。
彼女を『守る』ために、シロンは『魔素毒の森』を管理しながら旅に出る。
※ エブリスタ同時公開中

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
異世界王女に転生したけど、貧乏生活から脱出できるのか
片上尚
ファンタジー
海の事故で命を落とした山田陽子は、女神ロミア様に頼まれて魔法がある世界のとある国、ファルメディアの第三王女アリスティアに転生!
悠々自適の贅沢王女生活やイケメン王子との結婚、もしくは現代知識で無双チートを夢見て目覚めてみると、待っていたのは3食草粥生活でした…
アリスティアは現代知識を使って自国を豊かにできるのか?
痩せっぽっちの王女様奮闘記。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~
イノナかノかワズ
ファンタジー
助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。
*話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。
*他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。
*頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。
*無断転載、無断翻訳を禁止します。
小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。
カクヨムにても公開しています。
更新は不定期です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる