118 / 413
第4章 冒険 -王都編-
語らい
しおりを挟む「よくあんな料理が思い付くわね」
夜も更けて、俺が見張り番の暇つぶしにキッチンにいたら、フィリア王女に声を掛けられた。
「さっきお出しした料理のことですか?」
「そうよ。私は初めてだったからね。ちょっと気になったのよ」
「なるほど。あれは肉の切れ端のほうも上手く使えないかって考えてたらあのような形になったんです。たまたまですよ。
それよりもフィリア王女様は寝れないんですか?」
「ううん。特にそういう訳じゃないけど、一度あなたとゆっくり話してみたかったのよ。セレナとシェリルには伝えてあるから安心して」
「それはそれは。ありがとうございます」
マジかー。
王女と2人っきりって何喋ればいいんだ?
政治なんて何も分からんぞ。
「唐突だけど、料理人として私のところに来る気はない?」
ホントに唐突だな苦笑
でも答えに迷うことなんてない。
「せっかくのお誘いですが、セレナとシェリルもいますし、何よりも精龍亭を再開させなければなりませんのでお断りさせていただきます」
「まぁ、そう来るわよね。何となく分かってはいたけど、すぐに断られるとは思ってなかったわ。ちょっとは迷ってよ。そんなに宿屋が大事なの?」
「親の形見ですからね。俺はただ単に両親が楽しそうにやってたことを、そのまま引き継ぎたいだけなんですよ」
「両親のものを引き継ぐか…。考えたことないわね…っていうか、私の場合は考えたくもないわ」
「なんたって王女様ですからね。いろいろと問題もあるでしょう。ですが、国民の1人として言わせてもらうと、フィリア王女様には楽しく生きて欲しいです」
「楽しく?」
「そうです。どうせ生きるなら楽しいほうがいいじゃないですか」
「今は楽しめていないとでも?」
「出会ったばかりなのでハッキリとは分かりませんが、どこか窮屈そうに見えます」
「確かにそうかもしれないわね。王女なんて華やかに思われるかもしれないけど、実際には見えない牢獄で王家に飼われてるみたいなものだしね」
「そんな、牢獄だなんて…」
「しょうがないじゃない。そう感じちゃってるんだもの」
「やはりそこからは抜け出せないんですか?」
「うーん…。私の役割を考えたら、抜け出せるわけがないしね」
「役割…、つまり政略結婚ですか」
「そうね。私は産まれた時からそういう運命なのよ。婚約者とかはもちろんだけど、同じ歳頃の男の子や女の子がいても王女の肩書きに近寄ってきてるだけで友達っていう感じじゃなかった。でも…」
「でも?」
「セレナとシェリルは何だか違うわ。もっと仲良くなれる気がするの。この前騎士達を亡くしてしまったばかりだけど、少し前を向けるような気がするの」
「それなら、セレナもシェリルも一緒にいる甲斐があります。俺が言うのも何ですが、あの2人は自慢の嫁ですので仲良くしてやって下さい」
「はいはい、自慢の嫁ね。お惚気けを聞きに来たわけじゃないんだけどまぁいいわ。シーマさんだしね」
「すみません…」
「それじゃ、あんまりこっちに居るとあなたの自慢の嫁達が違う意味で心配しちゃうから戻るわ。邪魔してごめんなさいね」
そう言って、フィリア王女がキッチンを出て行こうとしたところで、俺は気になってた事を聞いてみた。
「フィリア王女様、女神エルピス様をなぜそんなに強く信仰しているのですか?」
「あなた…何故それを…。誰にも言ったことはないのに」
えっ、そうなの?!
誰でも知ってることなんじゃないの?!
11
お気に入りに追加
296
あなたにおすすめの小説

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~
冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。
俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。
そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・
「俺、死んでるじゃん・・・」
目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。
新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。
元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~
春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。
冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。
しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。
パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。
そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。
【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~
川原源明
ファンタジー
秋津直人、85歳。
50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。
嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。
彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。
白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。
胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。
そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。
まずは最強の称号を得よう!
地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語
※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編
※医療現場の恋物語 馴れ初め編

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる