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第4章 冒険 -王都編-
語らい
しおりを挟む「よくあんな料理が思い付くわね」
夜も更けて、俺が見張り番の暇つぶしにキッチンにいたら、フィリア王女に声を掛けられた。
「さっきお出しした料理のことですか?」
「そうよ。私は初めてだったからね。ちょっと気になったのよ」
「なるほど。あれは肉の切れ端のほうも上手く使えないかって考えてたらあのような形になったんです。たまたまですよ。
それよりもフィリア王女様は寝れないんですか?」
「ううん。特にそういう訳じゃないけど、一度あなたとゆっくり話してみたかったのよ。セレナとシェリルには伝えてあるから安心して」
「それはそれは。ありがとうございます」
マジかー。
王女と2人っきりって何喋ればいいんだ?
政治なんて何も分からんぞ。
「唐突だけど、料理人として私のところに来る気はない?」
ホントに唐突だな苦笑
でも答えに迷うことなんてない。
「せっかくのお誘いですが、セレナとシェリルもいますし、何よりも精龍亭を再開させなければなりませんのでお断りさせていただきます」
「まぁ、そう来るわよね。何となく分かってはいたけど、すぐに断られるとは思ってなかったわ。ちょっとは迷ってよ。そんなに宿屋が大事なの?」
「親の形見ですからね。俺はただ単に両親が楽しそうにやってたことを、そのまま引き継ぎたいだけなんですよ」
「両親のものを引き継ぐか…。考えたことないわね…っていうか、私の場合は考えたくもないわ」
「なんたって王女様ですからね。いろいろと問題もあるでしょう。ですが、国民の1人として言わせてもらうと、フィリア王女様には楽しく生きて欲しいです」
「楽しく?」
「そうです。どうせ生きるなら楽しいほうがいいじゃないですか」
「今は楽しめていないとでも?」
「出会ったばかりなのでハッキリとは分かりませんが、どこか窮屈そうに見えます」
「確かにそうかもしれないわね。王女なんて華やかに思われるかもしれないけど、実際には見えない牢獄で王家に飼われてるみたいなものだしね」
「そんな、牢獄だなんて…」
「しょうがないじゃない。そう感じちゃってるんだもの」
「やはりそこからは抜け出せないんですか?」
「うーん…。私の役割を考えたら、抜け出せるわけがないしね」
「役割…、つまり政略結婚ですか」
「そうね。私は産まれた時からそういう運命なのよ。婚約者とかはもちろんだけど、同じ歳頃の男の子や女の子がいても王女の肩書きに近寄ってきてるだけで友達っていう感じじゃなかった。でも…」
「でも?」
「セレナとシェリルは何だか違うわ。もっと仲良くなれる気がするの。この前騎士達を亡くしてしまったばかりだけど、少し前を向けるような気がするの」
「それなら、セレナもシェリルも一緒にいる甲斐があります。俺が言うのも何ですが、あの2人は自慢の嫁ですので仲良くしてやって下さい」
「はいはい、自慢の嫁ね。お惚気けを聞きに来たわけじゃないんだけどまぁいいわ。シーマさんだしね」
「すみません…」
「それじゃ、あんまりこっちに居るとあなたの自慢の嫁達が違う意味で心配しちゃうから戻るわ。邪魔してごめんなさいね」
そう言って、フィリア王女がキッチンを出て行こうとしたところで、俺は気になってた事を聞いてみた。
「フィリア王女様、女神エルピス様をなぜそんなに強く信仰しているのですか?」
「あなた…何故それを…。誰にも言ったことはないのに」
えっ、そうなの?!
誰でも知ってることなんじゃないの?!
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