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第4章 冒険 -王都編-

初めて

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「何よこれ!」


 何だ? フィリア王女が騒いでるな。
 やべー、朝食がお粗末過ぎたか。
 ただのスクランブルエッグにベーコンだもんなー。唐揚げが大丈夫そうだったからいけるかと思っんたんだけどなー。無理もないのか…。
 そもそもだけど、王女に食べさせるものなんてわかんねーよ。


「このソースと肉は何なのよ!」

「…やはり、お口に合いませんでしたか?」


 俺は覚悟を決め、フィリア王女の前に出てほぼ謝罪に近い形で問いかける。


「全然? とても美味しいわよ!」

「えっ?!」


 ん?
 どういうことだ?
 じゃあ、フィリア王女は何に対してキレてるんだ?


「今までこの味を知らなかったことが気に入らないのよね!」


 あ、そゆこと。
 

「でも、俺の作るものなんて所詮素人の大衆料理ですからね。王女様にはもっとふさわしい料理があるんじゃないですかね?」

「良い人材に大衆も貴族も関係ないわ。料理だって同じことよ。美味しければ国王だって口にするわ」

「なるほど」


 ほぉー。
 なかなか良い考えしてるな。
 好感が持てる。
 この王女様についていきたくなるな。


「そんなこと言ってる割に、その人材をどんどん辞めさせているのは、どこの王女様ですかな?」

「いや。そ、それは…その…アレよ。ちょっとだけ私とは会わなかっただけなのよ…」


 …。
 前言撤回しようかな。
 執事のアルテさんがちょっと絡んできただけでめっちゃ動揺してるじゃん笑
 ちょっと可哀想なのでちょっと話題を変えてやるか。


「これからもまだ旅は続きますけど、俺が出せる程度の料理で大丈夫なんですかね?」

「もちろんそれで構わないわ。出来ればアイゼンの幻陽が知らない料理だと嬉しいけど」

「それには何か理由が?」

「あの人達の先を越したいだけよ。オルテガはともかく、フォルティスとエテルナは露骨に自慢してくるのよねー」

「本当に仲がいいんですね。全然知りませんでしたよ笑」

「でも、仲が良くなったのはこの数年のことよ。私もいろいろ面倒なことをお願いしてるからね」

「そういえば、何故今回はアイゼンの幻陽に護衛を頼まなかったんですか?」

「それがね、彼らは時間停止機能付きのマジックバッグを探しにダンジョンへ行っちゃって…」

「…」


 あー、それはある意味俺のせいだな。
 あの人達本当に行ったんだな。
 その後で俺を呼び出したってことはバッグは見つかったのかな?
 まぁ、どっちでもいいけど苦笑
 面倒臭いことには変わりないし。


「まぁ王都に着くまではいろいろと全力を尽くしますよ」

「こんなことになっちゃってごめんなさいね…」

「いえいえ、フィリア王女様にはどっちみちお会いする予定だったみたいなので、俺たちにとってはそれが早くなっただけのことです。気にすることないですよ」

「そうね。そう言ってもらえると助かるわ。セレナやシェリルとももっと仲良くなりたいしね」


 そうか。
 それがあったんだ。
 そう思うと早めに出会えてよかったのかもしれないな。



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