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第3章 冒険 -グランツ編-

帰り道

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「ねぇねぇシーマさん、セレナさん」


 グランツへの帰り道、御者台にいたシェリルから声を掛けられた。


「どうしたシェリル?」

「2人から見て、ウチの宿屋はどうだった?正直に言って!」

「うーん、そうだな…。良くも悪くも普通だったかな」

「あっ、でもね。宿代は安かったと思うよ」


 俺に続くようにしてセレナも答えた。
 シェリルの関係者ということで宿代はタダだったので気にしてなかったが、セレナはちゃんと見てたんだなー。
 エラいぞ、セレナ。
 後でナデナデしてあげようかな。


「それじゃあダメなの?」

「どうかな…。俺たちは精龍亭にしかないものを提供しようとしてたからな。喜んでもらえるかは別としてな」

「そこにしかないものかー。アイゼンの幻陽御用達の宿屋が言うんだからそうなんだろうねー」

「ゆっくり考えていけばいいんじゃないか?いきなりの変化は戸惑いを産む。俺たちも跡継いだ時は慣れてもらうのに多少の時間がかかったしな」

「そうだね!そうするよ!」


 切り替え早いなー。
 すぐに答えが出ないと分かれば考えることを止める。
 シェリルは商人だけあって賢い。





「!!」


 セレナが驚いた後で怪訝な表情を見せた。


「セレナ、もしかして山賊か?」

「まだ可能性だけどね」

「反応はいくつ?」

「進行方向とは逆に7つ。どんどん近づいてきてる。どうする?」

「付けられたのか? まぁ今さら逃げ切れないからな。迎え撃つしかない」

「わかった。指示お願い」



 どんな戦いになるのかは相手の強さにもよるからな。最悪の場合を想定して動くとするか。
 シェリルにはスキルがバレてしまうがこればかりは仕方ないよな。
 シェリルは護衛対象だ。ここは依頼主と護衛として接したほうがいいだろう。
 馬車を止めて外に出る。


「シェリルさん」

「え?!  何で急に『 さん』付け?」

「あなたは護衛対象です。何としても守らねばなりません。あなたは馬と共に隠れていて下さい」

「馬はいいけど、箱や荷物はどうするの?」

「…これから目にすることは、出来れば内緒にしていただきたいのですが?」

「別にいいけど、どうするの?」

「こうします」


 俺は手をかざして、馬車の箱と荷物を収納した。
 その様子を見たシェリルは両手を口にあてて驚いている。


「まさかアイテムボックス…」

「時間がないので早く隠れて下さい。話は後にしましょう」


 シェリルが隠れたのを確認してから、セレナに声をかける。


「セレナ、あとどのくらいだ?」

「200メートルくらい。もうすぐ姿が見えるはず」

「魔法で迎え撃つ。準備を頼む」

「わかった」

「セレナ。この戦いは殺らなければ殺られてしまうんだ。人間だからって遠慮するな。弱らせてくれれば俺が全員殺す!」
 
 俺もセレナも対人戦闘は初めてだが、セレナは女の子だ。汚れ役は俺だけでいい。


「見えたよ!」


 サーチ通りの7体。
 どう見ても人間だ。

 冒険者ギルドで依頼書を見た時からイヤな予感はしてだけど、
 まさか、本当に山賊がお出ましとはな。
 

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