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第3章 冒険 -グランツ編-
魔道具
しおりを挟む護衛初日は何回かゴブリンに遭遇したけど危なげなく退けた。
問題なのは今日の宿だ。
近くに村もないので夜営するしかないということになった。
俺たちは冒険者なので問題ないがシェリルはそうもいかないだろう。
そんなことお構い無しに、ちょっと開けたところの端っこに馬車を停めたシェリルは、慣れた手付きで魔道具を周りにセットし出した。
「シェリル、何してるんだ?」
「これはね、魔物避けと認識阻害の魔道具なんだよ」
「へぇー。それがあれば見張りもいらないって訳か。高そうなもの持ってるね。さすがはルート商会だ」
「これでも絶対大丈夫ってことではないけど、何か近寄ってきたらアラームが鳴るんだよ」
「夕食はどうするんだ?」
「シーマさん達には悪いけど、昼と同じようにパンと干し肉だね」
まぁ、夜営なんてそうなるよな。
それは当然のことなので受け入れるが、セレナは少しだけ微妙な顔をしている。
俺のアイテムボックスに昨日の唐揚げとかが入っているのを知ってるからだろうな。でも、それを俺たちだけで食べる訳にもいかないし、一緒に食べたとしても時間停止のアイテムバッグという言い訳さえも苦しくなる。それくらい時間停止のアイテムバッグは手に入りにくい。俺たちの実力では持てるはずがないのだ。
俺に関する秘密を明かしてしまえば楽になるが、それをするほど信用は出来ても親密でなければならない。
非常に難しい問題なのだ。
今はセレナに我慢してもらうしかない。
「俺たちは冒険者だからな、気にすることはないよ。ただ…」
「ただ?」
「シェリルは馬車で寝るんだろ?」
「そうね。それが?」
「セレナも一緒にってお願いはダメか?」
「ううん。大丈夫だよ」
「よかった。セレナも女の子だからな。安全なところがいいんだ」
そうして俺たちは簡単に夕食を済ませてから、女性陣は馬車で、俺はテントで寝ることにした。
馬車の近くで寝ればアラームも聞こえるだろう。サーチを使いながら寝る必要もないなんて本当に助かる。
お金に余裕が出来たらそんな魔道具を手に入れてもいいのかもしれないな。
そういえば、
冒険に出てからはずっとセレナと行動してたから、初めて1人になった気がする。
そう思っただけでも寂しく感じてしまうな。
こんな時はエルピス様にお祈りしよう。
だけど、会えませんでした。
そんな都合よく会えないか。
女神様だしな。
都合のいい女扱いしちゃダメだよね…。
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