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第3章 冒険 -グランツ編-

グランツの市場

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 ギルドを出た俺たちは、市場に寄って買い物をすることになった。

 冒険者ギルド同様、市場もコスタとは規模が違う。大きい分だけ売っている種類も多ければ願ったり叶ったりなんだけどな…。

 とりあえずは、明日のフレンチトーストの食材を買わなければいけない。もし作れなかったら泊めてもらえなくなるかもしれないくらいの重要な案件だからな。そこはしっかりと抑えておきたい。シンシアさんのご機嫌を損ねたら露骨に大変そうだし…。

 広くて大きい市場だけあって予め予定していた買い物は完了することができた。
 あとは何か面白いものが見つかればいいんだけど、そう上手くはいかないかな…なんてことを思ってるうちに懐かしいものを見つけた。


 じゃがいもだ。


 この世界では初めて目にするので、早速お店のお姉さんに聞いてみると、東方の国から入ってきたもので、肉と煮るか焼いて塩で食べるか、といったところらしい。

 実際に調理してみないと分からない事だが、俺が知ってるじゃがいもなら精龍亭の料理の幅が広がること間違いないのでたくさん買っていろいろ試してみることにした。

 
「このいもって、ここにある分だけですか?」

「そうだね。この国で『がいも』はあまり馴染みがないので多くは仕入れてないんだよ」


 …がいもって言うんだー。
 じゃがいもでいいんじゃん。
 まぁ、俺が決める訳じゃないからしょうがないけど。


「そうですか…。じゃあ、とりあえずここにある分全部下さい」

「えっ?全部?」

「ダメですか?」

「いや、いいんだけど…。珍しいなって」

「いろいろと試してみたいんですよ」

「なるほど。わかった。全部で銀貨2枚でどう?」

「いいでしょう。買います」


 セレナの了解を得てないけど何も言わないってことは問題ないってことなんだろう。みかん箱2つ分くらいあるからな。それくらいあればいろいろと試せるだろう。
 そうだ。どうせなら他の種類のいもがあるかも聞いてみよう。


「他のいもって扱ってたりします?」

「うーん。あることにはあるけど、ウチの店に入ってきたら売る感じだね」

「じゃあ、次いつ入ってくるかもわからないってことですよね…」

「だったらさ、ウチに卸してくれる商会に行って聞いてみたら?」

「えっ?直接聞いちゃってもいいんですか?」

「あっ!」


 商会と直接取引するとなればこの店には何の利益もない。
 それをわかっていながら紹介するのは何か意味があるとしか思えなかったので聞いてみた。
 そしたら、お姉さんが急に顔を近付けてきた。セレナの驚く声が聞こえたが、お姉さんは何もなかったように耳打ちするように声を小さくして、周りに聞こえないように俺に話してきた。
 

「この際だからハッキリ言ってあげる。あなたアイテムバッグ持ってるでしょ。そんな大事なお客さんを親切にするのは当たり前じゃん。ウチなら大丈夫だから。その代わりウチでもまた何か買ってね!」

「なるほど。そういうことならこっちもそのつもりでいこうかな。」

「そうして。この通りの少し先にあるルート商会に行ってみてよ」

「わかった。今日明日は無理かもしれないけど近いうちに行ってみるよ」

「…」


 うーん。
 市場のお姉さんと仲良くなれたのはいいが、さっきは冒険者ギルドのアイラとのこともあるので、いよいよもってセレナとの仲が…。

 マジで甘いもの作らんとシャレにならん気がしてきた。

 セレナのためだけに新作を作って貢ぐことにしよう!


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