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第2章 宿屋

フレンチトースト

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 そして、翌々日フレンチトーストのお披露目の日だ。準備しながらも受け入れられるのか緊張してしまう。

 ちなみに、昨日のニンジンのオーク肉巻きも好評だった。あの反応からして定番になるだろうな。

 そして今日。いつもとは違う甘い香りが漂う朝の食堂に、戸惑いを見せるお客さんたち。そして「アイゼンの幻陽」の3人が姿を見せると、いつものように空気が引き締まる。


「甘い匂いがするー!何?なに?」


 エテルナさんの高い声が食堂に響く。


「シーマ、お前また何か企んでるな?」


 いやいやフォルティスさん、言い方言い方…。企んでるって…。


「今日は、いつも疲れるであろう皆さんの為に、甘めの朝食にしてみました」

「私も先日いただきましたが、とても美味しかったです。安心して召し上がって下さい」


 俺の言葉に、セレナもすかさずフォローを入れてくれる。よっぽど気に入ったのかなー。


「よし、セレナちゃんに言われたらしょうがねえな! 食べるぞ!」


 フォルティスさんの言葉を皮切りにして、みんな一斉に食べ始めた。


「ホントだー。甘ーい!!! 私、これ好き!」


 良かったー。エテルナさんに認められれば成功といっていい。どこの世界でも女性は甘いものに弱いのかもしれないな。


「パンを焼くことは珍しくないが、漬け込んだ後に焼くとはな」

「あぁ、いつもだとちと困るが、たまにはこういうのもいいな」
 

 オルテガさん、フォルティスさんの評価も上々だが、ボリューム的な問題で頻繁に出せるものではないかもしれない。週一くらいならいいのかな?


「何言ってんの? 私は毎日でもいいんだけど」


 エテルナさんや、気持ちは分かるけど、「余計なもの出しやがって」的な視線をフォルティスさんから浴びる俺の身にもなってくれ。


「よく食べる男性からしたら、物足りないかもしれませんので、そこはこれから考えていきます」

「そうだな。でもたまには食いたいからな。それだけは言っておくぞ」

「はい。ありがとうございます。」

「… 」


 エテルナさんが納得してないようだが、どうやら落ち着くところに落ち着いたみたいだな。でも、このままってわけにはいかないよな…。


 「エテルナさん、ちょっといいですか?」


 食事を終えて食堂を出ていくアイゼンの幻陽の、エテルナさんだけに声をかける。


「なーに?」

「先程の料理ですが、気に入ってくれたなら、前もって言ってくれれば朝食以外でも用意しますけど?」

「ホントに?」

「えぇ。セレナもまた食べたそうですしね。そんなに作るの難しくないので」

「うっ!」


 セレナが恥ずかしそうにして声を出しているが、顔を見れば分かるぞ。さっきも食べたそうにしてもんな。


「ありがとうー。そうしてくれると嬉しいわー。楽しみが増えたわ!」


 エテルナさんが上機嫌になって食堂を出ていく。これでよかったんだよな、きっと。


 「あのー…」

 「はい? 何でしょう」


 油断してたら、他の女性から声をかけられた。冒険者パーティ「エリシオン」の魔法師ノエルさんだ。
 年齢は俺たちよりも少し上くらいだったはず。この人もエテルナさんよりのキレイ系なんだよな。パーティーといってもエリシオンは2人だけだ。それでも剣士のクリスさんとDランクまで上がったのだから実力はあるのだろう。


「その…、お金は出しますから、またこのお料理作ってくれませんか?」

「お金はともかく、そうですね…。エテルナさんと同じ時で良ければ作りましょうか? 」

「それでいいです。よろしくお願いします」

「わかりました。それではその時は声かけさせていただきますね」

「はい。その時を楽しみにしてます!」


 そう言って食堂を出ていくノエルさんを見送った後で、何やら後ろから視線を感じるので振り向くと、セレナがジト目で仁王立ちしていた。


「キレイな女性たちを虜にしちゃって…。どうなるのかしら」


 セレナさん、そんなことないよー。たまたまフレンチトーストが美味しかっただけだから…ね。


「セレナも一緒に食べるんでしょ? 俺の入る隙なんてないよ」

「それもそうね。私も楽しみにしてよう!」


 これでよかったのかな?


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