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第2章 宿屋
試験
しおりを挟む「本当に宿を継ぐ気か? やるなら本気でやらないと客が逃げるぞ!」
「俺には厳しいことぐらいわかってます。でも、俺は逃げたくない!」
ガンマおじさんのキツい口調に、俺は怯まずに毅然と答えた。女性陣は黙ってやりとりを眺めてる。
「シーマも長い間手伝ってたから、ある程度出来るんだろうが、問題は料理だ。あれはずっとレギアスが1人でこなしてきたからな。お前に出来るのか?」
「俺は父さんが作るのを見てただけだけど、冒険者として野営で何度も料理してきた。とりあえずは朝食だけでも出せるようにしたい」
実はこの宿の一つの自慢がレギアスの作る料理だったりする。だからこそ変なものは出せないのだ。
「わかった。そこまで言うなら試験をするぞ! 」
「えっ?」
「朝食に出せる料理を今から作ってくれ。それも3品だ」
「ちょっとお父さん、何も今からやらなくてもいいんじゃない? しかも3品なんて。シーマは病み上がりなのよ!」
いきなり試験をすると言い出したガンマおじさんを、セレナが止めにかかる。
「シーマが継ぐと言ったんだ。これくらいこなせなくてどうする」
「わかりました。1時間下さい。用意します」
「頼むぞ」
今は冒険者をしていたシーマくんの記憶にプラス椎名守としての知識がある。
自慢じゃないが両親が共働きだったこともあって料理の経験はそれなりにあるんだ。何とかなるだろう。
いや、何とかしないとな。
幸いにも調味料はそれなりにあったし、冷蔵出来る魔道具には食材もあったのですぐに取り掛かる。
作るのは
スクランブルエッグにトマトソース
ニンジンのオーク肉巻き
オニオンスープとトースト
こちらの3品だ。
この世界はパンが主食のようなので、その辺も踏まえた料理にした。
「ほーぅ、意外とやるもんだな。なかなか様になってやがる」
「そうね。見慣れない作りかたもあるけど期待出来そう」
ガンマおじさんとリーザおばさんが呟く横で、セレナだけはじっと俺の作業を見ている。見守っているのかもな…。
「出来ました」
『 料理のスキルが発現しました。』
俺が発した声の後で、エルピスのような声が頭の中に聞こえてきた。
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