23 / 30
10月16日
しおりを挟む
更に日を跨いでも、ティニーの不調は和らがなかった。寧ろ悪化している。
「ティニーごめんね、水飲む?」
ニーオはあの後、水を調達し戻ってきてくれた。どこからか入れ物まで入手して、数日分の水を用意してくれた。本当に、感謝しても仕切れないくらい有り難い。
「……うん、ニーオ君にありがとうって言わなきゃね……」
「うん、だから早く治してね」
ティニーは、熱が下がらず辛そうだ。食事もまともに取れず、ずっと固いベッドに横になって震えている。
もしかしたら、このまま死んでしまうかもしれない。
ルアンは目を閉じ、辛そうに眠るティニーを瞳に写しながら何度目かの想像を脳裏に過ぎらせた。
だが、首を横に振り否定する。
もし現実になってしまったら、生きている意味を、希望を失ってしまう。
死が怖いから、生にしがみ付くだけになってしまう。
体の中が空っぽだ。それはいつもの事ながら、今日は特に空虚感を感じる。
心と体は繋がっていると聞くが、それは本当かも知れない。無力感が強くなるほど、体が辛くなる。
不意にノックが響いた。あの3回と2回のノックだ。
直ぐに扉越しまで近付き、声を通す。
「ニーオ、来てくれたの?」
「あぁ、ティニーちゃんどうかなと思って」
「……うん、まだ治らない……」
敢えて重症度は加えなかったが、ルアンの中で不安の渦が加速して行く。
「…………そうか」
「…………ティニーが居なくなったらどうしよう……」
意図せずそう呟いていた。昨日から、何度も過ぎった憂慮だ。
「……お前何言い出すんだよ」
咎められ、ルアンは笑声を含ませ返事した。扉越しで見えないのを良い事に、顔はそのままで。
「……はは、ごめん、こんな事言っても意味無いのにね……」
だが、台詞と気持ちのずれが悟られたのか、ニーオからの返事は返らない。
暫く空気が流れてから、ぽつりと、小さくもはっきりとした意見が投げられた。
「………………もうさ、いっそ死ぬ?」
「え?」
「川に飛び込めば、処刑よりは楽に逝けると思うぜ」
表情が想像出来るほどに、言葉に諦めと嘲笑が宿っている。だが、真剣さも垣間見える。
「……ニーオ……?」
「なんてな! 冗談! ティニーちゃん早く治ると良いな! じゃあ、様子聞きに来ただけだから行くな!」
別れの挨拶を残し、ニーオの声は聞こえなくなった。
基本的に無音で行動するため、本当に去ったかは定かではないが、恐らく帰ったと思われる。
ルアンは、後方から小さく聞こえる苦しげな寝息を耳に、ニーオの提案をそっと巡らせた。
「ティニーごめんね、水飲む?」
ニーオはあの後、水を調達し戻ってきてくれた。どこからか入れ物まで入手して、数日分の水を用意してくれた。本当に、感謝しても仕切れないくらい有り難い。
「……うん、ニーオ君にありがとうって言わなきゃね……」
「うん、だから早く治してね」
ティニーは、熱が下がらず辛そうだ。食事もまともに取れず、ずっと固いベッドに横になって震えている。
もしかしたら、このまま死んでしまうかもしれない。
ルアンは目を閉じ、辛そうに眠るティニーを瞳に写しながら何度目かの想像を脳裏に過ぎらせた。
だが、首を横に振り否定する。
もし現実になってしまったら、生きている意味を、希望を失ってしまう。
死が怖いから、生にしがみ付くだけになってしまう。
体の中が空っぽだ。それはいつもの事ながら、今日は特に空虚感を感じる。
心と体は繋がっていると聞くが、それは本当かも知れない。無力感が強くなるほど、体が辛くなる。
不意にノックが響いた。あの3回と2回のノックだ。
直ぐに扉越しまで近付き、声を通す。
「ニーオ、来てくれたの?」
「あぁ、ティニーちゃんどうかなと思って」
「……うん、まだ治らない……」
敢えて重症度は加えなかったが、ルアンの中で不安の渦が加速して行く。
「…………そうか」
「…………ティニーが居なくなったらどうしよう……」
意図せずそう呟いていた。昨日から、何度も過ぎった憂慮だ。
「……お前何言い出すんだよ」
咎められ、ルアンは笑声を含ませ返事した。扉越しで見えないのを良い事に、顔はそのままで。
「……はは、ごめん、こんな事言っても意味無いのにね……」
だが、台詞と気持ちのずれが悟られたのか、ニーオからの返事は返らない。
暫く空気が流れてから、ぽつりと、小さくもはっきりとした意見が投げられた。
「………………もうさ、いっそ死ぬ?」
「え?」
「川に飛び込めば、処刑よりは楽に逝けると思うぜ」
表情が想像出来るほどに、言葉に諦めと嘲笑が宿っている。だが、真剣さも垣間見える。
「……ニーオ……?」
「なんてな! 冗談! ティニーちゃん早く治ると良いな! じゃあ、様子聞きに来ただけだから行くな!」
別れの挨拶を残し、ニーオの声は聞こえなくなった。
基本的に無音で行動するため、本当に去ったかは定かではないが、恐らく帰ったと思われる。
ルアンは、後方から小さく聞こえる苦しげな寝息を耳に、ニーオの提案をそっと巡らせた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
少年少女たちの日々
原口源太郎
恋愛
とある大国が隣国へ武力侵攻した。
世界の人々はその行為を大いに非難したが、争いはその二国間だけで終わると思っていた。
しかし、その数週間後に別の大国が自国の領土を主張する国へと攻め入った。それに対し、列国は武力でその行いを押さえ込もうとした。
世界の二カ所で起こった戦争の火は、やがてあちこちで燻っていた紛争を燃え上がらせ、やがて第三次世界戦争へと突入していった。
戦争は三年目を迎えたが、国連加盟国の半数以上の国で戦闘状態が続いていた。
大海を望み、二つの大国のすぐ近くに位置するとある小国は、激しい戦闘に巻き込まれていた。
その国の六人の少年少女も戦いの中に巻き込まれていく。

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる