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10月14日
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翌朝ルアンは、咳の音で目を覚ました。
夜中、延々恐怖と戦っていたが、疲れのせいか何時の間にか眠ってしまっていたのだ。
「…………大丈夫?」
「……あっ、ごめん、起こした……?」
ティニーはまた何度か咳をし、潤んだ円い瞳をルアンに向けた。
「…………風邪かな……」
状況に追い討ちをかけるようなタイミングに、ルアンは絶望感しか抱けなかった。
寝転がったままティニーの額に手を宛てると、その手に高熱を感じた。ティニー自身自覚しているのか申し訳なさそうだ。
「……ごめん、また風邪引いちゃった……」
「……ティニーの所為じゃないよ、……早く治さなきゃね」
ルアンはシーツを全て譲渡する為、ベッドからゆっくりと出る。
「…………ごめんね、早く治すね」
ティニーは咳をしながらも、目を閉じる事で睡眠を取ろうと努めていた。
棚には、瓶の姿がない。風邪の時は水分を取って眠った方が良いのだろうが、水は一滴すらない。
雨漏りした時の水溜まりは、茶色く濁って虫が集っており、飲み水にするは流石に抵抗がある。
ルアンは無力さに苛まれ、同時に戻ってきた恐怖感にまた涙を流した。
数時間後、上階から苦しげな咳の音が聞こえて来た。
ルアンは、くぐもった咳が幾度と繰り返されて居る事に気付き、直ぐに階段を上った。
両手で口を押さえ、必死に咳を押さえつけるティニーに駆け寄り、背中を摩る。
「……ティニー、大丈夫?」
ティニーは涙を浮かべたまま、何度か咳をしてから情けない笑顔を浮かべた。
「…………大丈夫、咳が出ちゃうだけだから……見た目が酷いだけだから安心して」
ルアンは、目の前の現実に悪夢を重ねてしまい、じわりと目の奥を熱くする。
泣き顔を見せてしまわないように、言葉もなく無理矢理な微笑だけを返した。
夜中、延々恐怖と戦っていたが、疲れのせいか何時の間にか眠ってしまっていたのだ。
「…………大丈夫?」
「……あっ、ごめん、起こした……?」
ティニーはまた何度か咳をし、潤んだ円い瞳をルアンに向けた。
「…………風邪かな……」
状況に追い討ちをかけるようなタイミングに、ルアンは絶望感しか抱けなかった。
寝転がったままティニーの額に手を宛てると、その手に高熱を感じた。ティニー自身自覚しているのか申し訳なさそうだ。
「……ごめん、また風邪引いちゃった……」
「……ティニーの所為じゃないよ、……早く治さなきゃね」
ルアンはシーツを全て譲渡する為、ベッドからゆっくりと出る。
「…………ごめんね、早く治すね」
ティニーは咳をしながらも、目を閉じる事で睡眠を取ろうと努めていた。
棚には、瓶の姿がない。風邪の時は水分を取って眠った方が良いのだろうが、水は一滴すらない。
雨漏りした時の水溜まりは、茶色く濁って虫が集っており、飲み水にするは流石に抵抗がある。
ルアンは無力さに苛まれ、同時に戻ってきた恐怖感にまた涙を流した。
数時間後、上階から苦しげな咳の音が聞こえて来た。
ルアンは、くぐもった咳が幾度と繰り返されて居る事に気付き、直ぐに階段を上った。
両手で口を押さえ、必死に咳を押さえつけるティニーに駆け寄り、背中を摩る。
「……ティニー、大丈夫?」
ティニーは涙を浮かべたまま、何度か咳をしてから情けない笑顔を浮かべた。
「…………大丈夫、咳が出ちゃうだけだから……見た目が酷いだけだから安心して」
ルアンは、目の前の現実に悪夢を重ねてしまい、じわりと目の奥を熱くする。
泣き顔を見せてしまわないように、言葉もなく無理矢理な微笑だけを返した。
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