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10月13日
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目覚めると、目の前にティニーが居た。一発で分かるくらい、心配そうな顔をしている。
頭が痛い。それに、視界がいつもと違う。
「…………ティニー……」
「お兄ちゃん……!」
ティニーは涙を溢れさせた。堪えきれずに溢れて来たのか、止まらない様子だ。
ルアンは、はっきりとした違和感を持ちながらも上体を起こす。すると、ティニーが体に抱きついた。
「良かった! お兄ちゃん!」
「……あ、うん……ごめんね」
俯き、嬉し泣きするティニーを他所に、ルアンは家の中を見回し、目の前で腕を伸ばし縮めた。
すると直ぐに、自分の置かれた状態が理解できた。
左目が失明している。しかも完全な失明だ。
ルアンは更に困難になった逃亡生活を描き、堪えられない涙を滴らせた。
「……ごめんね……ごめんねティニー……」
視力を失ったどころか、水の確保も出来なかった。
しかも頭もぼんやりとし、距離感覚も曖昧な状態では、明日早々から出かけるのは無理があるだろう。
ティニーは何が何だか分からず、困惑した様子だった。
その後、どうにかしていつもの兄を演じたが、ティニーの心配そうな表情は抜けなかった。
しかしティニーなりに考えているのか、何か特別な事を質問しては来なかった。
夜の闇が、いつもよりも濃く見える。強い殴打の所為で、頭もまだぼんやりとしていて鈍く痛む。
だがそれよりも、男に向けられたオーラが忘れられなかった。殺気に似たおぞましいオーラだ。
殴られ、あのまま捕まっていたら。視力を無くした事が知られたら。
多分、そのままガス室送りだった。
ルアンは、底知れない恐怖に背筋を凍らせた。
自分事として認識はしていたが、急に身近になった¨死¨に、唯々大きな恐怖を募らせた。
頭が痛い。それに、視界がいつもと違う。
「…………ティニー……」
「お兄ちゃん……!」
ティニーは涙を溢れさせた。堪えきれずに溢れて来たのか、止まらない様子だ。
ルアンは、はっきりとした違和感を持ちながらも上体を起こす。すると、ティニーが体に抱きついた。
「良かった! お兄ちゃん!」
「……あ、うん……ごめんね」
俯き、嬉し泣きするティニーを他所に、ルアンは家の中を見回し、目の前で腕を伸ばし縮めた。
すると直ぐに、自分の置かれた状態が理解できた。
左目が失明している。しかも完全な失明だ。
ルアンは更に困難になった逃亡生活を描き、堪えられない涙を滴らせた。
「……ごめんね……ごめんねティニー……」
視力を失ったどころか、水の確保も出来なかった。
しかも頭もぼんやりとし、距離感覚も曖昧な状態では、明日早々から出かけるのは無理があるだろう。
ティニーは何が何だか分からず、困惑した様子だった。
その後、どうにかしていつもの兄を演じたが、ティニーの心配そうな表情は抜けなかった。
しかしティニーなりに考えているのか、何か特別な事を質問しては来なかった。
夜の闇が、いつもよりも濃く見える。強い殴打の所為で、頭もまだぼんやりとしていて鈍く痛む。
だがそれよりも、男に向けられたオーラが忘れられなかった。殺気に似たおぞましいオーラだ。
殴られ、あのまま捕まっていたら。視力を無くした事が知られたら。
多分、そのままガス室送りだった。
ルアンは、底知れない恐怖に背筋を凍らせた。
自分事として認識はしていたが、急に身近になった¨死¨に、唯々大きな恐怖を募らせた。
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