ノイズノウティスの鐘の音に

有箱

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10月11日

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「お兄ちゃん、大丈夫?」
 ベッドにて寝転がって聴いていた、ラジオの音声が右から左へとすり抜ける中、ティニーの声だけが中心に残った。
「……えっ? 僕なんか変?」
 ルアンは、堂々と取り繕ってみせる。ティニーには、メイカが捕まったなんて口が裂けても言えない。
「……うん、ちょっと変だよ、何かあった?」
「……ううん、いつものだよ、色々考えちゃうだけ」
「…………そっか……」
 ティニーはルアンと距離を詰めると、腕もとに顔を埋めた。
 内容は定かでなくとも、考えることは可笑しくない。
 もしかしたらティニーも、今何か考えているかもしれない。自分の所為で考えさせてしまったかも知れない。
「……不安にさせた?」
 ティニーは埋めたまま、小さな声で返答する。
「……えっと……お兄ちゃんが辛そうなのは嫌だなって……思っただけ」
 その優しい答えが、少しだけ心を癒す。
 望んだ未来に、少しでも近い将来を手に入れる。ティニーの為に、手に入れる。
 ルアンは心の中、何度目かの決意を固めた。
「……そっか、ありがとう」

 ラジオが9時40分を知らせた所で、ルアンは徐に電源を落とした。
 10時にはどの局も、こぞって処刑を放送する。もう何年も処刑は続いているのに、一向に無くならないのが不思議になる。
 多分、自分達も捕まらない限り終わらないんだろうな、と深い嘆息を漏らした。
 それは絶対に嫌だけど。

 ――鐘が鳴る。誰かが、まるで叫び声だと言ったのがよく分かる。
 処刑され、死に行く人間の悲鳴のようだ。ノイズがまるで、喉が潰れるまで叫んだ声のようで胸が苦しくなる。
「喉渇いたから、水取ってくるね」
 ルアンは黒い思考に飲まれそうになるのを、体を動かす事で阻止しようと試みた。
 ――――だが、それは失敗に終わった。瓶の中の水が空になってしまったのだ。
 持った感じ重みはあるが、元々瓶自体に重量があり、減少が感知し辛いのだ。
 ニーオに外出するなと勧告を受けた矢先だが、食料は兎も角、水がないのは致命的だ。
 ルアンは溜め息を漏らしながらも、明日の日課に¨水の補充¨を加えた。
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