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9月25日
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鐘が鳴る頃、ルアンはとある二つの建物の間に立っていた。そこには隙間程度の空間があり、両脇には同じ年頃の少年少女が横並ぶ。
「――通りの雑貨屋は廃棄が多いらしいよ」
「へー良いわね。何時頃に捨てるとかは分かってるの?」
「それは調査中らしい」
会話をする両脇の二人、――右側の少年は新しく仕入れた情報を得意げに話し、笑う。左側の少女は、キラキラと喜びに満ちた眼差しを少年へと向けていた。
ルアンは二人の間でのやり取りを、仄かな笑顔を浮かべ聞いていた。
「ルアンはなんかある?」
「僕は何も。あ、いつも行くパン屋新種が出てた」
「なにそれ」
可笑しそうにくすくすと笑った、少女の名をメイカと言う。年は15歳で、緩く波打ったセミロングの髪がもったりと肩にかかっている。
伸びきって大きくなった服とズボンを見につけていて、どちらにも落ちないようにする為の結び目があった。
メイカは正真正銘の孤児だ。住処も定着しておらず、ルアンよりも貧しい立場にある。しかしそう言った立場になっても、メイカはいつも明るくにこにこしている。
「それとそれとー、新しい地下道も見つけたらしい!」
にかっと歯を見せ笑う、少年の名をニーオと言う。年はルアンと同じ16歳で、鼻の上のそばかすが目立つ短髪の少年だ。
薄い素材のくすんだ白いマフラーに、これまた伸びきったTシャツを着ていて、片側が肩から落ちている。
ニーオには母親が居る。だがティニー同様体が弱く、母親の事を語る時いつも不安げだ。
そんなニーオもとても明るく、強気な性格の持ち主だ。
ルアンは、メイカとニーオの二人と共に過ごす事が多かった。彼らとは、戦争する前からの友人で、ずっと親しくしている。励まし合い強め合える、良い友人たちだ。
「――通りに本屋が会っただろ? その右の道を曲がってだな」
勿論、会うのに¨強め合う¨意外の理由も存在する。
それは、単刀直入に言って情報交換の為だ。
特にニーオは友人の幅が広いらしく、様々な所から情報を仕入れてきてくれる。その情報に、何度命を助けられた事だろう。
「さっすがニーオ! その道覚えておけば、逃げるのに役立ちそうね!」
メイカが向けた尊敬の眼差しに、ニーオは頭を掻き照れ笑う。
その内側の感情に、ルアンは気付いていた。
ニーオはメイカが好きなのだ。恋愛との意味で。
「そういやティニーちゃんどう?」
「変わらずだよ」
「そっか、良かった」
ニーオはメイカよりも昔からの知り合いで、ティニーの事も知っている。
「そうね、ティニーちゃん元気そうで良かったわ」
メイカには話だけしてあり、実際引き合わせた事はない。しかし知ってからというもの、よく気に掛けてくれる。
「早く皆で遊びてぇなー」
素直な言葉を漏らしながらも、ニーオは少し遠くへと視線を据えた。気付いたルアンが先を追う。
するとそこにはまた別の、しかし同じ立場の子ども達が居て、こちらを見ていた。
「俺、あっちの子達にも情報教えてくるわ!」
「うん、いってらっしゃい」
ルアンも何度か話した事のある子ども達だ。ニーオが近付くと、子ども達は笑顔で群がった。こうした行為はもう何度目かになる。
――――皆が繋がり、命を支えてゆく。
そうして、いつになるか分からない解放を待つのだ。
「――通りの雑貨屋は廃棄が多いらしいよ」
「へー良いわね。何時頃に捨てるとかは分かってるの?」
「それは調査中らしい」
会話をする両脇の二人、――右側の少年は新しく仕入れた情報を得意げに話し、笑う。左側の少女は、キラキラと喜びに満ちた眼差しを少年へと向けていた。
ルアンは二人の間でのやり取りを、仄かな笑顔を浮かべ聞いていた。
「ルアンはなんかある?」
「僕は何も。あ、いつも行くパン屋新種が出てた」
「なにそれ」
可笑しそうにくすくすと笑った、少女の名をメイカと言う。年は15歳で、緩く波打ったセミロングの髪がもったりと肩にかかっている。
伸びきって大きくなった服とズボンを見につけていて、どちらにも落ちないようにする為の結び目があった。
メイカは正真正銘の孤児だ。住処も定着しておらず、ルアンよりも貧しい立場にある。しかしそう言った立場になっても、メイカはいつも明るくにこにこしている。
「それとそれとー、新しい地下道も見つけたらしい!」
にかっと歯を見せ笑う、少年の名をニーオと言う。年はルアンと同じ16歳で、鼻の上のそばかすが目立つ短髪の少年だ。
薄い素材のくすんだ白いマフラーに、これまた伸びきったTシャツを着ていて、片側が肩から落ちている。
ニーオには母親が居る。だがティニー同様体が弱く、母親の事を語る時いつも不安げだ。
そんなニーオもとても明るく、強気な性格の持ち主だ。
ルアンは、メイカとニーオの二人と共に過ごす事が多かった。彼らとは、戦争する前からの友人で、ずっと親しくしている。励まし合い強め合える、良い友人たちだ。
「――通りに本屋が会っただろ? その右の道を曲がってだな」
勿論、会うのに¨強め合う¨意外の理由も存在する。
それは、単刀直入に言って情報交換の為だ。
特にニーオは友人の幅が広いらしく、様々な所から情報を仕入れてきてくれる。その情報に、何度命を助けられた事だろう。
「さっすがニーオ! その道覚えておけば、逃げるのに役立ちそうね!」
メイカが向けた尊敬の眼差しに、ニーオは頭を掻き照れ笑う。
その内側の感情に、ルアンは気付いていた。
ニーオはメイカが好きなのだ。恋愛との意味で。
「そういやティニーちゃんどう?」
「変わらずだよ」
「そっか、良かった」
ニーオはメイカよりも昔からの知り合いで、ティニーの事も知っている。
「そうね、ティニーちゃん元気そうで良かったわ」
メイカには話だけしてあり、実際引き合わせた事はない。しかし知ってからというもの、よく気に掛けてくれる。
「早く皆で遊びてぇなー」
素直な言葉を漏らしながらも、ニーオは少し遠くへと視線を据えた。気付いたルアンが先を追う。
するとそこにはまた別の、しかし同じ立場の子ども達が居て、こちらを見ていた。
「俺、あっちの子達にも情報教えてくるわ!」
「うん、いってらっしゃい」
ルアンも何度か話した事のある子ども達だ。ニーオが近付くと、子ども達は笑顔で群がった。こうした行為はもう何度目かになる。
――――皆が繋がり、命を支えてゆく。
そうして、いつになるか分からない解放を待つのだ。
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