1 / 8
二十年ぶりの再会【1】
しおりを挟む
「山本くん、久しぶり! 私のこと覚えてる!?」
居酒屋の店先に立った。そんな時だった。振り向くと、美しい女性がいた。
上から下へ、厭らしさは伝わらぬよう視線を這わせる。
整った顔立ちに魅惑的な体つき。飾り気のないセミロングとお堅いスーツ、地味な黒のビジネスバッグが却って美しさを引き立てていた――じゃなくて、誰だっけ?
「えーっと……」
「小学生の時、同じ学校だった森川香奈だよー! まさか忘れちゃった?」
詳しく自己紹介されたが、どうしても過去には戻れなかった。しかし、忘れたなどと言って印象を悪くしたくない。防衛本能が働いた結果、自然と見栄を装備していた。
「森川さんか! 美人になってて一瞬分からなかったよ! えっと、小学生だから二十年ぶりくらい?」
「そうだね。四年生の時だから、ちょうど二十年……って、もう! 上手いこと言って! て言うか前は呼び捨てだったじゃん。どうしたの?」
「あー、ほら森川さんも大人になったし、距離感忘れちゃって」
転がる表情を頼りに、記憶の探索を続けるが見つからない。よくある名字じゃなければ、判明も早かったかもしれないのに。
こんな美人を忘れるなんて、僕の頭はどうかしている。いや、顔つきは変わるもんだけど。
「あ、今から飲むところだった?」
問われて目的を思い出す。漂いだした、別れの気配に抗いたくなった。
「……よかったら森川さんも飲む?」
「……いいの!?」
森川さんは、少し驚いてから輝きを全面に宿す。喜と楽の中に、見え隠れする感情が可愛かった。
うちの妻も、このくらい可愛ければ良かったのに――と家庭を思いだし、二人きりを一瞬躊躇う。しかし、時々ならいいよね、と躊躇を即捨てた。
居酒屋の店先に立った。そんな時だった。振り向くと、美しい女性がいた。
上から下へ、厭らしさは伝わらぬよう視線を這わせる。
整った顔立ちに魅惑的な体つき。飾り気のないセミロングとお堅いスーツ、地味な黒のビジネスバッグが却って美しさを引き立てていた――じゃなくて、誰だっけ?
「えーっと……」
「小学生の時、同じ学校だった森川香奈だよー! まさか忘れちゃった?」
詳しく自己紹介されたが、どうしても過去には戻れなかった。しかし、忘れたなどと言って印象を悪くしたくない。防衛本能が働いた結果、自然と見栄を装備していた。
「森川さんか! 美人になってて一瞬分からなかったよ! えっと、小学生だから二十年ぶりくらい?」
「そうだね。四年生の時だから、ちょうど二十年……って、もう! 上手いこと言って! て言うか前は呼び捨てだったじゃん。どうしたの?」
「あー、ほら森川さんも大人になったし、距離感忘れちゃって」
転がる表情を頼りに、記憶の探索を続けるが見つからない。よくある名字じゃなければ、判明も早かったかもしれないのに。
こんな美人を忘れるなんて、僕の頭はどうかしている。いや、顔つきは変わるもんだけど。
「あ、今から飲むところだった?」
問われて目的を思い出す。漂いだした、別れの気配に抗いたくなった。
「……よかったら森川さんも飲む?」
「……いいの!?」
森川さんは、少し驚いてから輝きを全面に宿す。喜と楽の中に、見え隠れする感情が可愛かった。
うちの妻も、このくらい可愛ければ良かったのに――と家庭を思いだし、二人きりを一瞬躊躇う。しかし、時々ならいいよね、と躊躇を即捨てた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【フリー台本】朗読小説
桜来
現代文学
朗読台本としてご使用いただける短編小説等です
一話完結 詰め合わせ的な内容になってます。
動画投稿や配信などで使っていただけると嬉しく思います。
ご報告、リンクなどは任意ですが、作者名表記はお願いいたします。
無断転載 自作発言等は禁止とさせていただきます。
よろしくお願いいたします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる