写る記憶と宝物

有箱

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愛する妻

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 妻とは、かれこれ二十年の付き合いになる。出会いは、視覚障害を持つ者同士の集まりだった。そこで偶然話をし、意気投合したのが始まりだ。

 ただ、妻の場合、お兄さんの付き添いで来ていたらしい。そのお兄さんは私たち夫婦を思い、近場で一人暮らししている。

 同じ境遇の者を家族に持つからか、妻は出会った当初から苦労を理解し、率先して手助けしてくれた。

 この人と一生添い遂げるのだと確信出来るほど、本当に大切な人になった。そして、大好きな人に。
 写真の彼女と、妻がいるから生きていられる。そう言いきれるほどに。



清隆きよたかさん。明日、兄の所に行ってくるね」

 食事中、妻が切り出してきた。これは、よくある会話の一端である。

 やはり、盲目ゆえに出来ないことは存在するものだ。だから妻は毎週二回、決まった曜日の訪問を取り決めていた。

 休日であれば共に出向くが、生憎明日は仕事がある。勤めているマッサージ店は不定休なのだ。

「良いよ、ゆっくりしておいで。いつも気遣わせてすまないね」
「ううん、シフトは午前中だけだったよね。私も早く帰るようにはするよ」

 お互いの行動は、事前に報告し合う。それが私たちの決まりごとだった。結婚前からお互い素直な人間ではあったが、結婚後に改めて取り決めた。

 気付きや気掛かり、井戸端会議の内容など、為になりそうなことは全て伝えあった。感謝の言葉も例外ではない。

 言葉で情報を伝え合うと、本当に生きやすくなる。そこに合わせてくれる妻には、いつも本当に感謝だ。

 もちろん判断は個々にあり、全ての暴露をお互いに求めているわけではない。

「いや、時間は気にしないで。お兄さんとたくさん話しておいでよ」
「そう? 分かった。じゃあいつも通り、何かあったら連絡してね」
「了解!」

 大きく相槌を打ち、二時の方向へと手を伸ばした。
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