未来

有箱

文字の大きさ
上 下
5 / 6

恐怖ー3

しおりを挟む
 君のような子――と聞いて、最初に浮かんだのは足の欠落だった。ただ、丁寧に名乗られてから続けられたせいで、その言葉をどう捉えるべきか分からない。上の人間から名乗られたことなんかなかったのだ。ゆえに戸惑う。
 恐らく青年――アーリュが"すること"と形容したのは自己紹介だったのだろう。

「あ、ごめん、またしくじった! ……駄目だな僕は……喋ること事前に考えてたはずなのに。えっと、不快な思いをさせたのなら申し訳ない……って言っても、君のような足を失った子を待っていたのは事実で……あああ! 言葉って難しいな……」

 話し出すと止まらない性格なのか、アーリュは一人で喋り続ける。私は返事も忘れ、ただ唖然としてしまった。
 しかし、それは言葉数に圧倒されている訳ではない。その声色に、雰囲気に、含まれる言葉の数々に、唖然としてしまったのだ。
 人間に対するような態度に――むしろそれ以上の、思いやるような台詞にも。

「えーっと、ごめんね、きっと凄く辛い思いをしたよね。でも、僕には君が必要なんだ……だからあの」

 彼は、私を一人の人間として扱おうとしている。

 想像と真逆の待遇に、安堵が全身を包み込んだ。じわりと瞳に涙が浮かぶ。だが、落としてしまうのは我慢した。

「僕の相棒になってくれないか?」

 だが、足掻きは無駄だったらしい。
 糸が切れたように泣き出す私を、アーリュは不器用に抱き締めてくれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ただいまに続きがなくても

有箱
現代文学
大好きなおばあちゃんは、認知症のせいで私のことを忘れてしまった。 私じゃない名前で呼ばれる度、心が痛んでしまう。 ところで、家族も誰一人知らない〝きらら〟って誰なの。私は弘子だよ?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...